古くから富や権力の象徴となってきた「金」は、世界の共通通貨と呼ばれるほど価値が失せることがありません。
そんな「金」ですが、新型コロナウイルスの影響で世界的に景気が悪くなり、価格が今までにないほど上昇して注目を集めています。
もともと「金」は投資家達からみても運用先としては人気の現物資産ですが、これは株や債券に合わせて「金」もポートフォリオに加えることで、より幅広い分散投資が可能になるためです。
また、「金」は株や債券のように発行体が破綻して価値がなくなる、ということがないため、世界中で売買が可能なのも特徴の1つです。ただ、株や債券とは異なり、保有しても利子や分配金といったインカムゲインが得られないことが投資経験のない初心者に敬遠される理由でもあります。
そのため、「金」に投資して利益を得るためには安い時に購入して高い時に売る必要があるわけです。「金」の価格は世界的に経済状況が悪くなると上がる傾向があるため、経済を読み解く指標とも考えられていますが、今回の記事ではそんな注目が集まっている「金投資」への心得をお伝えしていきたいと思います。
金への投資が再注目されている背景
上記は、田中貴金属のHPで見ることができる金の価格推移(2015年1月~2020年8月)になります。
見て分かるように、2019年の4月から徐々に上昇していた価格は2019年に4,000円を超え、その後の2020年新型コロナウイルスによる世界的な景気後退で6,000円とかなり価格が上昇しています。
1グラムで6,000円を超えると考えるとかなり高額で大きな資金が必要に感じ人もいるかもしれませんが、今は1000円といった少額から投資することも可能になっているため、大きな資金がなくとも金へ投資することはできます。
2019年から金の価格は勢いよく上昇していますが、金価格上昇には複合的な要因があります。2020年からの上昇は新型コロナウイルスによる景気後退が原因なのは言うまでもありませんが、米中貿易摩擦や香港、イランといった地政学リスクの増加で「安全資産」と言われている金への投資が2019年から盛んになっているためです。
また、トランプ政権による極端な政策で政治・経済の先行きが不透明だったこともあり、新興国が外貨準備の一部を米ドルから金へシフトしたり、年金基金などがポートフォリオに金を加えたりしていることも挙げられます。
金は世界中で埋蔵されている量が限られているのに対し、中国やインドでは宝飾品としての需要が高く、世界中のスマホでも必要になる材料です。ただ、金は長期的に見て魅力的に投資先になりますが、価格が高騰すると売る人も増えるため、一時的に大きく値下がりすることを考慮にいれるとまとまった資金で購入するのではなく、少額で分散購入するのが理想です。
投資初心者は金投資で短期的に利益を出そうとする傾向がありますが、大切なのはインフレに備えたり資産を守る目的で保有するということです。
金投資の3つの種類
一言で金投資といっても、金へ投資できる種類は3つあります。
- 現物の金(地金やコインなど)
- 純金積立
- 金ETF
現物資産として購入する際にはバー(地金)か地金型金貨(アンティークコインなど)になりますが、バー(地金)の際には「5g・10g・20g・50g・100g・200g・300g・500g・1kg」などの購入する際の規定量があり、まとまった資金が必要になり高額になります。また、500g未満の売買にはバーチャージという手数料が必要になるのでオススメしません。
もちろん、ある程度まとまった資金が用意できる人や、コインの中でも安いものを選ぶことで購入することはできますが、投資をこれから始めるという人からすると不安に感じる人も多いと思いますので、最初は金ETFと純金積立がオススメです。
ちなみにアンティークコインなどは素材が金という以外にも、製造数の少なさや歴史的な要素も加わり同じ量の金よりも価格が高価な傾向があり、コレクションとして集めることを趣味とする投資以外の目的を持って購入する人も多くいます。
高価な金を少額投資可能な純金積立てと金ETF
純金積立は貴金属商や金属会社のほか、ネット証券、一部のネット銀行が取り扱っています。
専用の口座を開設して毎月一定額の金を買える量だけ買っていくだけです。
純金積立であれば、ドルコスト平均法と同じように毎月一定額購入していくことで高い時には買える時が少なく、価格が安い時には多く購入することができるため、価格変動の影響を受けずに済みます。
これは高値づかみをしずらく、価格の平均化をすることができるため初心者でも損をすることが少ない投資法です。
そして、毎月の最低積立額は1,000円から可能なので、少ない資金でも投資が可能です。ただ、積立額に対して1.5%〜2.5%ほどの積立手数料が必要になることは覚えておきましょう。
積立てた金は口座開設した会社に預けるような形になりますが、実際に売却して現金化する際には現物での引き出しにも対応しています。
ETF(上場投資信託)は、証券取引所に上場していて、株と同じように証券会社を通じて売却する投資信託のことになります。そして、価格が金の価格と連動する金ETFは現在数銘柄上場しており、1口5,000円〜15,000円ほどで購入が可能です。
最低購入額は純金積立よりも高くなりますが、保有期間中に信託報酬である管理運用費は0.4〜0.5%程度なのでその分はお得になります。
金ETFは金に直接投資するものと、金価格に連動して有価証券に投資して金には直接投資しないものの2点があります。後者の場合には有価証券の発行体が破綻するリスクもあるので注意しておきましょう。
資産として持つ金の最適な保有割合は10%
高価なイメージのある金を少額投資することができるのは魅力ですが、純金積立や金ETFのような金投資の際も気をつけなくてはいけないのが保有する割合です。
例えば、ドルコスト平均法のように少額でも一定額を毎月購入していく場合でも、金の価格が急落した場合には保有している資産を大きく減らしてしまう可能性があります。もちろん、長期間保有することを前提にすれば価格が戻る可能性がありますが、それでも極端に価格が低下すると不安になりますよね。
ポートフォリオ(安全資産と危険資産がどのような構成をしているのかを表す最適保有率のこと)において、一般的にいわれている純金融資産の中で理想的な金のバランスは10%です。
資産形成で理想的なポートフォリオの作り方と聞くと難しく感じ人もいるかもしれませんが、簡単にいえば、全体的な資産のなかで特定の投資先に集中して購入するよりも、金額が小さくても少しずつ金を積み立てていき、10%を目安に金を純金融資産として保有するというような考え方です。
金だけに投資するのではなく他の分散投資でリスクを落とすことはもちろんですが、その中でも保有割合を10%にすることで世界的に景気が良くなり金価格が落ちても、他の株や不動産といったものが上昇する形になるので損失をカバーすることができます。
金投資への注意点
新型コロナウイルスなどによって世界的な景気後退で金の価格が上がりましたが、高値をつけて注目されている時には投資時期としては不向きといえます。
逆に景気が回復して上昇していけば金の価格が低下する傾向がありますが、景気と真逆に価格が動くのは、昔から世界的に価値あるものとして認識され安全資産として投資家達が保有している株や債券などを売約して金へシフトするためです。
時期によっては購入した時点で損をする可能性もありますので、最低でも購入前に現在の金価格は過去と比べて高いのか?低いのか?は確かめておきましょう。
高価なイメージのある金ですが、今では少額で投資して保有することが可能になりました。ただ、投資対象は金以外にもありますので、事前に運用計画を考えてできる限り損失を出さない分散投資できるようにしていきましょう。
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