バブル経済が崩壊して以降、日本では不景気や少子高齢化の影響を受けて収入の大半を貯蓄する傾向が強くなりました。特に日本は世界的に見ると貯蓄率が高く、「2020年第2四半期の資金循環(速報)」の統計データでは貯金の比率が1031兆円で全体の54.7%と非常に高いことが分かっています。
そんな資産に対して保守的な人が多い日本ですが、近年では年金支給額開始年齢の引き上げや支給額の減少から年金以外で老後資産を作ろうとする動きが活発化しています。
年金に関してはネガティブな話題も多い分、準備に取り掛かるのは早ければ早いほど良いと20代から老後資産を考えている人もいるほどです。ただ、将来年金がいくら貰えるのかによっても必要な資産設計は異なりますし、退職金の有無などによっても考え方は変わるでしょう。
しかし、将来の話だからこそ、意外と自分がいくら年金を貰えるのか?というのを詳しく知っている人は多くはありません。特に20代〜30代に多く、老後対策として始めたのに貰える年金の額を考えれば必要のない資産形成をしてしまっているというケースも少なくありません。
そこで、今回の記事では年金の平均的な受給額や基本について紹介するとともに、自身で年金受給額を確認する方法と計算方法についても解説していきたいと思います。
現時点では貰える年金額は増減する可能性もありますが、受給額減少や豊かな老後を迎えるための資産増加を考えている人は今一度将来のことを考えてみて適切な資産形成をおこなえるように参考にしてみましょう。
日本にある公的年金制度の給付は3種類
将来給付される年金は3つあります。
1つは65歳になる原則として貰える「老齢年金」と呼ばれるもので、これは国民年金と厚生年金が該当します。2つ目は怪我や病気などで障害を負った時に受け取ることができる「障害年金」です。
そして、最後に加入者や受給者が亡くなった時に遺族が貰うことができる「遺族年金」の3つが将来受け取れる可能性がある年金の種類となります。ただ、「障害年金」と「遺族年金」に関してはあまり将来受け取る年金として考える人は少なく、この2つを資産設計に組み込んで考える人はいないでしょう。
そのため、基本的に定年を迎えた際に受け取ることができる「老齢年金」の国民年金か、プラスして厚生年金というのが日本人の老後に受け取れる年金ということになります。
公的年金である「国民年金」と「厚生年金」の基礎知識
基本的に私達が将来受け取ることができる年金は、働き方や年齢によって違いはありますが「国民年金」と「厚生年金」の2つになります。恐らく多くの人がご存知の年金制度になりますが、今一度年金というものの仕組みを理解しておくためにも加入条件や納付方法などについて解説したいと思います。
日本に住んでいる全員が加入する国民年金
国民年金とは日本国内に住んでいる20歳〜60歳未満の人が全員加入する年金であり、月々の納付額が決まっています。そして、この納付した月数に応じた金額が「老齢基礎年金」として65歳以降に支給されるというわけです。
この国民年金には以下の3つに別けられており、それぞれ保険料の納付方法や納付額が異なります。
- 第1号被保険者
- 第2号被保険者
- 第3号被保険者
第1号国民年金被保険者は、自営業者・農業・漁業といった仕事に従事している社会人やが対象で納付用紙を用いて自身で納付くを行います。半年払い、年間払い、2年払いといった形で一定期間ごとの豊富額を支払う方法も利用が可能となっており、収入に合わせて柔軟な納付ができるようになっています。
第2号国民年金被保険者は、恐らく多くの人が該当する会社に勤務して給料を受け取って厚生年金や共産組合に加入している人になります、保険料は加入する制度からまとめて国民年金に拠出ことになるため、第2国民年金被保険者が直接納める必要はありません。
第3号国民年金被保険者は、第2号国民年金被保険者に扶養されている配偶者が該当します。第3号国民年金被保険者の国民年金保険料は第2号国民年金被保険者が加入している厚生年金が一括して負担するため、個別で収めるという手間は発生しません。
ただ、第1号国民年金被保険者に扶養されている配偶者の場合、第3号国民年金被保険者にはならず、第1号国民年金被保険者となるため、定められた国民年金保険料を納める必要が発生するので覚えておきましょう。
対象者 | 保険料納付方法 | |
---|---|---|
第1号被保険者 | ・自営業者 ・フリーター ・20歳以上の学生など |
口座振替や納付書で自身で納める。 収入によっては免除や猶予がある。 |
第2号被保険者 | ・会社員 ・公務員 ・私学教職員 |
厚生年金保険料に国民年金保険料分が含まれているので勤務先が納める。 |
第3号被保険者 | ・専業主婦(主夫)などの年間収入が130万円未満の人 | 自身で保険料は納める必要はありませんが、配偶者(第2号被保険者)が加入する厚生年金制度が一括で負担する。 |
国民年金に上乗せして貰える厚生年金
厚生年金は、国民年金と違って誰でも加入しているわけではありません。厚生年金保険が適応された法人に勤務する人が対象となる年金制度であり、納付した合計額に応じて65歳から支給が開始されます。
厚生年金保険が適応された法人には条件があり、以下のようなケースが対象となります。
- 従業員が常時5人以上いる農業・漁業・林業・サービス業を除く個人事業所
- 従業員の半数以上が適用事業所になることに同意し、事業主が申請して厚生労働大臣の認可を受けている
この厚生年金はパートやアルバイトとして勤務している場合でも常時使用している場合は被保険者となりますが、70歳未満の人が対象となっています。
また、厚生年金の保険料は半分は事業主が負担する仕組みとなっており、自身で納付手続きをする必要がありません。半分は勤務している会社は負担し、残りの半分は給与から差し引かれる形で納付されます。
公的年金は、誰でも加入可能な「国民年金」を1階、条件を満たした事業所に勤務している「厚生年金」を2階とする2階建て構造となっています。
厚生年金は国民年金の2〜3倍の受給額
日本の年金制度は、まず20歳〜60歳未満の全ての国民が加入している国民年金が1階にあり、その国民年金に上乗せされえて厚生年金が支払われる2階建て構造だと先程解説しました。
厚生年金は基本的に会社に勤務しているひとであれば加入しているため、会社が提供する年金保証制度と考えることもできますが、この2つが老後に給付されるとしてどれぐらい給付額が違うのでしょうか。
恐らく多くの人が気になっている部分だと思いますが、厚生労働省年金局の「令和2年度 厚生年金保険・国民年金事業年報」では、ひと月の平均受給額は男女別で以下のようになっています。
国民年金 | 厚生年金 | 差額 | |
男性 | 59,040円 | 164,742円 | 105,702円 |
女性 | 53,699円 | 103,808円 | 50,109円 |
全体 | 55,946円 | 144,366円 | 88,420円 |
上記の表を見て分かるように、厚生年金に加入していると受給額は国民年金の2〜3倍になります。
女性の場合には結婚後に扶養内で働くことも多く、専業主婦になるひとも少なくないため男性よりも厚生年金が低い傾向にありますが、それでも国民年金の2倍です。
国民年金と厚生年金の2つを老後に受け取ることができれば老後の生活は可能ですが、それでも住居が持ち家なのか賃貸なのかによっても支出は変わるうえ、生活水準によっては最低限の生活しかできないことも考慮しなければなりません。
もちろん、これに加えて退職金がある会社に勤務していれば余裕が生まれますが、現在では退職金が出る会社も少なくなっていることもあり、貯金を切り崩しながら生活をしているひとも多いと言われています。
そういった年金に対するネガティブな話題が多く挙がるようになった近年では、将来の不安から金融庁の長年のスローガンである「貯蓄から投資へ」を若いうちに行う人も近年では増えています。
そして、これら公的年金は必ず受け取れるわけではなく、受給するための条件があることをご存知でしょうか。ほとんどの人には関係ありませんが、念の為に確認しておきましょう。
公的年金を受給できる条件
国民年金と厚生年金には、老後を迎えた際に受給するための条件があります。
国民年金の老齢基礎年金の場合には、原則として10年以上(平成29年7月31日までは受給資格期間が25年以上)の資格期間が必要となります。資格期間とは、保険料を納めた期間・保険料免除期間・合算対象期間を足したもので、つまり10年以上は最低でも国民年金保険料を支払うことが条件となります。
逆に国民保険料の免除や猶予手続きを行わず、国民年金保険料の滞納期間が長期間で納付されている保険料の期間と合算対象期間を合計しても10年に満たない場合には受給できないことになります。
そして、厚生年金の場合では老齢基礎年金の受給条件を満たしているのに加え、下記の加入期間を満たしている必要があります。
- 60歳~64歳の厚生年金:厚生年金の加入期間1年以上
- 65歳からの厚生年金:厚生年金の加入期間1か月以上
厚生年金のみであれば加入期間は短いため厳しくありませんが、国民年金の受給条件を満たしていなければ受け取ることができないため、基本的には国民年金よりも条件は厳しいといえるかもしれません。そして、当然ですが加入期間が長いほど受給される金額は多くなります。
ここまでの内容で国民年金と厚生年金の受給額はお伝えしましたが、実際に満額貰える人もいれば少ない人もいますし、繰り上げ受給・繰り下げ受給によっては金額も異なります。
そのため、次はあなたが実際に老後を迎えた際にいくら年金を貰えるのかを解説したいと思います。
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あなたは年金をいくらもらえる?年金受給額の計算方法
ここまで説明した公的年金を受給する人は、国民年金である「老齢基礎年金」と厚生年金の「老齢厚生年金」の2つの年金を最大でも受け取ることになるはずです。
先程解説した国民年金の平均受給額は月額55,946円で厚生年金は144,366円ですので、2つとも受給した際には約20万円程度の金額となりますが、厚生年金では納める保険料は収入に応じて金額が変動することもあり、その分老後に支給される受給額に影響を及ぼします。
つまり、収入次第で支払う納付額も異なるということです。
例えば、先程男性に比べると女性のほうが受給額の平均が低いことをお伝えしましたが、これは結婚による子育てや退職といった勤務期間の少なさから収入が減ったことが関係しています。
こういった人によって受け取れる受給額は異なるため、一言で将来受け取る年金をいくらかを考えたとしても、納付金額と納付期間で異なります。また、国民年金は比較的金額は変わりませんが、それでも保険料を納めた月数に比例するので納付の免除申請などを行っていた場合にも変化します。
単純に長く多く支払えば貰える年金額は増えることになりますが、実際に老後にもらえる具体的な受給額を知るために国民年金と厚生年金の2つの年金制度ごとに計算方法について解説していきたいと思います。
国民年金で受け取れる受給額の計算方法
国民年金は厚生年金と違って全員が加入することができます。基本的に20歳になったら支払うことになりますが、まだ学生で経済能力が不足している場合、家庭の事情や奨学金の返済といった事情から就職後に毎月納付するのが厳しいという人も少なくありません。
そのため、保険料の免除や納付猶予の申請で経済的な負担を減らせるように考えられており、20歳になったからといって必ず支払うという人ばかりではありませんが、当然のことながら最初からずっと納付していた人と後から納付した人とでは年金の受給額には差が生まれます。
国民年金は比較的分かりやすく、基本的には納めた月数に比例して受け取れる受給額を計算することができ、仮に20歳〜60歳までの間(480ヶ月)に全て支払っていれば満額受給することができます。
国民年金受給額の計算方法 |
【年金額×(保険料の納付月数÷480ヶ月)】 |
2021年(令和3年)の国民年金の満額は78万900円となっていますので、仮に30歳から支払い始めて納付期間が30年の場合には【780,900×(360÷480)】という計算になり、4分の3である年間58万5,675円を受け取ることができる事になります。
納付を「全額免除」または納付金額の「減額」を申請していた場合
国民年金保険料の納付がすぐにできず、納付の全額免除や納付金額の減額を申請していた場合には将来貰える年金は減額される事となります。
もしもあなたが過去に「納付金額の減額」を申請していたり、「全額免除」を申請していた場合にはどれぐらい減額されるのかを確認するためにも以下を参考にしてみましょう。
納付金額 | 減額内容 |
---|---|
全額免除 | 免除月数×1/2 |
本来の納付額の1/4 | 免除月数×5/8 |
本来の納付額の1/2 | 免除月数×6/8 |
本来の納付額の3/4 | 免除月数×7/8 |
免除申請をしていた期間によって減額内容は異なるものの、基本的には納付額が多ければ多いほど老後に貰える年金は多く、逆に納付額が少なければ老後の年金は少なくなります。ただ、老齢基礎年金は早く受け取りたい場合には60歳からの繰り上げ受給が可能です。
その場合、1ヶ月ごとに繰り上げると年間月額0.5%が減額されるので注意しておきましょう。
5年間繰り上げると30%もの減額が発生するので安易に繰り上げ受給するのは損をすることになりますが、反対に1ヶ月あたりの年金受給額は増やしたい場合には最大5年間の受給開始時期を繰下げることができるため、その場合には1ヶ月繰り下げるごとに年金月額が0.7%増額し、5年間繰り下げると42%の増額を見込めます。
厚生年金で受け取れる受給額の計算方法
厚生年金の受給額については国民年金よりも複雑になります。それは、毎月貰っている給与や賞与に応じた納付額が人によって異なり、納付した保険料に連動して変わる仕組みなためです。
厚生年金で納付する保険料は、支払われた給与をベースに計算した標準報酬月額と賞与の2つ元に算出するため給与が多ければ比例して毎月の保険料も多くなります。もちろん、その分将来貰える老齢厚生年金も増える事となります。
ただ、厚生年金における保険料は会社が半分拠出する事になり、令和3年度時点での厚生年金の保険料率は18.3%で、そのうち会社と折半した9.15%が加入者の負担分となります。
そして、国民年金と異なり厚生年金の受給額を計算するうえで複雑になる理由が、加入した期間によって計算方法が違うためです。
厚生年金受給額の計算方法 | |
2003年3月以前 | 平均標準報酬月額(≒平均月収)×7.125/1000×2003年3月以前の加入月数 |
2003年4月以降 | 平均標準報酬額(≒平均月収+賞与)×5.481/1000×2003年4月以降の加入月数 |
厚生年金の年金額の保険料は納めた月数や給与だけではなく、加入期間が2003年(平成15年)の3月までなのか4月以降なのかで計算式がやや異なり、さらに条件を満たせば加給年金や長期加入者特例なども受けられることから、金額は人によって大きく違いが発生します。
この計算式の違いは、平成15年4月以降から賞与(ボーナス)に対しても保険料が課されるようになったためです。
人によって収入も異なることから納付する保険料や老後の年金額も異なるため、ここでは計算をしなくても年金受給額を知る方法を2つご紹介したいと思います。
日本年金機構のWebサイト「ねんきんネット」
「ねんきんネット」は日本年金機構が運営するサイトであり、年金記録や将来もらえる年金見込額がパソコンやスマートフォンからいつでも確認が可能となっています。
また、利用登録を行いログインをすることで、現在まで支払った年金保険料から予測される年金受給額や持ち主が不明の年金記録から自分のものがないか検索できるなどかなり役立つサイトとなっており、その他にも「ねんきんネット」では以下の事が利用可能となります。
- 自身の年金記録の確認
- 年金見込額の試算
- 持ち主不明記録検索
- ねんきん定期便、通知書の確認
- 届書の作成
- 通知書再交付申請
ねんきんネットはアクセスキーが有無の登録方法が異なり、アクセスキーがなければ利用開始まで時間を取られていますので気をつけておきましょう。
毎年誕生月に送付される「ねんきん定期便」
「ねんきん定期便」は、国民年金や厚生年金に加入しているひとを対象に贈られる年金加入記録になります。これは年金制度への理解を深めることを目的として年金加入期間や保険料納付の実績といった年金に関する情報が日本年金機構、厚生年金の各実施機関から送付されるものになっています。
基本的に毎年誕生月に加入者には届くようになっているため、ご存知の人も多いかもしれませんが忘れずに確認するようにしておきましょう。
ただ、紹介したこれら2つ以前に、今の年収で将来どれぐらい厚生年金をもらえるのかすぐに知りたいと言う人も多いと思います。そこで、次は年収別に将来もらえる厚生年金の額をご紹介していきます。
次のページ 年収別に見る厚生年金受給額 |
年収別に見る厚生年金の受給額
国民年金の額が小さいというわけではありませんが、厚生年金の平均受給額は144,366円です。国民年金と比較すれば88,420円もの差額があるため、どうしても老後の生活は厚生年金の方を収入の柱として考えるひとが多くなるでしょう。
ただ、これは平均額であり、実際に自分はどれぐらい受給額があるのかというのは計算してみなければ分かりません。しかし、「ねんきんネット」や「ねんきん定期便」で確認しているひとを除けば、計算するのが手間だったり収入の変化も多い年代で複雑だと感じる人も多いでしょう。
そこで、ざっくりで良いので今の年収から毎月もらえる受給額を知りたいという人は、以下の早見表から年収ごとのおおよその厚生年金受給額を確認してみましょう。
年収 | 保険料納付期間 | ||||||
10年 | 15年 | 20年 | 25年 | 30年 | 35年 | 40年 | |
300万円 | 1.5万円 | 2.2万円 | 3.0万円 | 3.7万円 | 4.5万円 | 5.2万円 | 6.0万円 |
400万円 | 1.9万円 | 2.9万円 | 3.9万円 | 4.9万円 | 5.8万円 | 6.8万円 | 7.8万円 |
500万円 | 2.3万円 | 3.5万円 | 4.7万円 | 5.9万円 | 7.0万円 | 8.2万円 | 9.4万円 |
600万円 | 3.2万円 | 4.8万円 | 6.4万円 | 8.0万円 | 9.6万円 | 11.3万円 | 12.9万円 |
年収が高くなるに比例して納めている保険料も多くなるため、基本的には納付期間と収入に比例して厚生年金の受給額が高くなっていきます。上記の表はあくまで毎月もらえる厚生年金の受給額になりますが、これに国民年金が加わる形となります。
「2つを合わせても思ったより少ない…」と思った人もいるかもしれませんが、今後の物価上昇や住んでいる地域によってはさらに老後の生活が厳しくなる可能性も否定できず、老後の資金が2000万円が不足するという話題から危機感を抱いている人も少なくありません。
ただ、年代とともに昇進などから収入は増えていくものですので、今分かっている受給額よりも増えていく傾向にあります。もちろん、業種や仕事の内容によっても変わるため、早いうちに老後への資金対策も考えておく心がけが重要となります。
これはつまり、年金だけの生活だけでは貯金を切り崩しながら生活を維持するのが精一杯という可能性もあるわけで、ゆとりのあるセカンドライフを望む場合には、公的年金に加えて別の方法で資金を準備することも求められるようになっています。
そこで多くの人が考える選択肢に私的年金というものがあります。
私的年金とは公的年金の上乗せ給付を保障する制度で「国民年金基金」「確定拠出年金」「確定給付企業年金」などあり、加入は任意ですので将来が不安な人にはオススメです。
ここまでの内容では公的年金の受給額について解説しましたが、最後に私的年金についてもご紹介していきたいと思います。
将来の年金受給額から不安に感じるひとは参考に老後資金について考えてみましょう。
私的年金は公的年金に上乗せ給付する制度
私的年金は公的年金の上乗せの給付を保障する制度になり、簡単にいえば個人で積み立てていく年金のことです。この制度は老後の生活が年金生活だけで送るのに不安を抱く個人や企業が、自身のニーズに合わせて制度を選択することが可能であり、「国民年金基金」「確定拠出年金」「確定給付企業年金」などがあります。
簡単にいってしまえば政府が運用しているのではなく、民間の保険会社などが販売している個人年金保険が私的年金に該当します。
例えば自営業者の場合、厚生年金ではなく国民年金のみとなり、どうしても厚生年金に加入している会社員と比べると将来もらえる受給額に差が生じることになります。この事から自営業者などには上乗せを求める強い声があり、年金受給額の差を解消するために厚生年金に相当する国民年金制度が平成3年の5月に設立されています。
つまり、自営業者などでも企業に務めているサラリーマンと同じく「二階建て」が可能となり、こういったように個人で将来貰える年金を増やすために積み立てて年金を上乗せできるやり方が私的年金です。
そして、私的年金には「企業が自社の退職金制度に関する福利厚生の一環として実施する年金」と「個人が任意で加入する年金」があり、「確定給付型」と「確定拠出型」の2つ種類に別けられています。まずはこの2つについて解説を交えながら私的年金の種類についてご紹介していきたいと思います。
確定給付型
「確定給付型」とは、加入した期間などに基づいて将来の給付額が決められている年金制度になります。つまり、毎月一定額を地道に積み立てていくことで無理なく資金を作ることができるということです。「給付建て年金」とも呼ばれるこの制度は、それまで主流であった厚生年金や退職金などに代わって増加した企業年金制度でもあり、国民年金基金がこのタイプに該当します。
また、「確定給付企業年金(DB)」と呼ばれる企業年金として紹介されることも多くあり、個人年金保険にも「定額年金」という形の確定給付型の商品が存在しています。
確定拠出型
確定拠出型は、加入者が拠出した掛け金とその運用収益の合計額から給付額が決まる年金制度で、ある種投資に近い見方をするひともいます。給付額が決まっている確定給付型に比べて確定拠出型は加入する際に毎月いくら積み立てるのかを決めることになります。
そして、加入者の運用次第で積立金以上の給付額を得ることもあれば、逆に給付額がマイナスになるという事も考えられます。これは変額型の個人年金や確定拠出年金制度が該当します。この確定拠出年金制度に企業型と個人型があり、個人型はiDeCoと呼ばれているので聞いたことがあるというひとも多いかもしれません。
個人で使える私的年金種類と加入条件
それでも老後の公的年金を柱として、私的年金などを活用することで将来の年金額を増やすことは誰でも可能なため、年金だけで不安という方は早い段階で利用していくのがオススメです。
私的年金は種類によって保険料や年金額が異なり、どこが運営しているかによっても色々と違う点がありますので、加入条件を含めてどのような私的年金があるのかをご紹介していきたいと思います。
①国民年金基金
国民年金基金は、自営業やフリーランスなどの厚生年金に加入できない第一被保険者が任意で加入することができる制度で、老齢年金の上乗せが可能となります。掛金は口数制となっており、受け取る年金額の給付型を自身で選択します。
給付に関しては1口目は終身年金タイプとされてはいるものの、2口目以降は確定年金のタイプも選ぶことが可能となっています。
掛金は全額所得控除の対象で所得税や住民税が軽減されますが、国民年金保険料を免除されているひとは加入ができないようになっているので注意しましょう。
②iDeCo(個人型確定拠出年金)
iDeCoは資産運用としても多くの人に知られているので、もしかしたら知っているひとも多いかもしれません。iDeCoは個人が任意加入で資金を支払、自身で運用方法を選びます。
原則60歳以降に受ける個人型確定拠出年金になります。
証券会社や銀行、保険会社などの多くの金融機関が取り扱っており、2017年以降は加入対象が公務員や企業年金に加入しているサラリーマン、専業主婦まで広がったこともあって多くの人に知られるようになりました。
また、一気に知られるようになった主な理由として、税制の優遇が受けられるというメリットがあり、運用中は運用益に対して非課税となり、受け取る際にも退職所得控除や公的年金等控除といった所得控除があります。しかし、受け取れる年金額が運用成績次第と言う部分や管理手数料の高さ、原則60歳までお金が引き出せないというデメリットがあるので注意しておきましょう。
③企業年金
企業年季は、従業員の退職後の生活保障として福利厚生の一環で企業が独自に導入する年金制度になります。ただ、この企業年金は企業ごとに内容が異なり、企業によっては採用していないところも多いので自身の勤務先に確認してみましょう。
基本的に確定給付企業や企業型確定拠出年金などがありますが、民間の金融機関へ運用を委託している形となります。
企業年金は退職年金とも呼ばれ、もともとは企業が一度にまとめて支払わずに済むことから、その分の利息に相当するお金をプラスして支払うことから始まった制度となります。
④個人年金保険
個人年金保険は民間の保険会社が取り扱っている年金商品となります。
公的年金や企業年金だけでは老後の資金に不安がある人も多く、将来の老後生活を充実させたいというひとが中心として事由に加入可能な私的な年金です。
保険料や毎月の一時金などを支払い続け、60歳など契約で事前に決めた年齢から年金を受給することができます。
受け取り期間も10年間や終身といった契約次第で自由に選ぶことができ、支払った個人年金保険料は要件を満たせばその年所得税が軽減される個人年金保険料控除の対象ともなっています。
私的年金の加入資格
ここまで紹介した年金は、公的年金や私的年金を合わせると約6種類ほどあります。そんな老後の生活を支えてくれる年金では、解説したように加入資格がそれぞれ異なります。
自身がどれに該当し、どの年金制度に加入できるのかを今一度確認しておきましょう。
国民年金 | 厚生年金 | 国民年金基金 | 企業年金 | iDeCo | 個人年金保険 | |
第1号被保険者 | ○ | × | ○ | × | ○ | ○ |
第2号被保険者 | ○ | ○ | × | ○ | ○ | ○ |
第3号被保険者 | ○ | × | × | × | ○ | ○ |
将来の生活基盤だからこそ「今」必要性を考える
今回の内容では、基本的な年金の内容と将来受け取ることができる年金受給額について詳しく解説しました。年金といえば、将来の生活の柱であり、老後を迎えた際に誰も貰うイメージを抱くと思います。
しかし、私達の人生には家族の加齢や障害、死亡などの要因で自立した生活を過ごすのは困難になるリスクは必ずあります。そのリスクを予測することができないからこそ、これらに備えるための仕組みが公的年金制度であり、社会全体で予め備えるための保証が完備されています。
ただ、それぞれの年金には加入条件や受給条件があり、たとえ満額受給できたといえど老後の生活に余裕があるかというのは疑問です。
それぞれの平均受給額にしても、国民年金は月額55,946円で厚生年金は144,366円となっており、これでは足りないという人もいれば、足りるもののもう少し老後資金にプラスして旅行や趣味を楽しみたい人もいるでしょう。
そこで将来に備えた公的年金だけではなく、個人で自由に加入が可能な私的年金の重要性も近年では非常に高まっていますが、実質私的年金は預けた資金がほとんど変わらないこともあり、資産運用へ積極的に資金を移す人も増えています。
まだ将来のことであり、老後までの時間に余裕がある今だからこそ、今一度将来の生活をイメージしてこの機会に年金以外の老後資金を作ってみては如何でしょうか。
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