年金にも税金がかかる?年金受給者の確定申告と老後の税金を解説

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年金にも税金がかかる?年金受給者の確定申告と老後の税金を解説

老後の生活をどのようにイメージしているかは人それぞれですが、人生100年時代を迎えて若いうちから老後への不安を募らせる人も少なくありません。特に老後の生活資金が話題になることが多い昨今、公的年金だけでは生活が立ち行かないだけではなく、そもそも本当に貰えるのかという疑問すら抱く若者もいます。

 

「まだ将来のこと」と楽観的に考えている人もいれば、「今から少しずつ準備しておこう」と老後対策を検討している人もいますが、自分のことだけに一度は老後を意識したことがある人も多いでしょう。

老後も働くというのを視野にいれて将来を見越しているのならいいかもしれませんが、ほとんどの人は老後を働かずにゆっくりと過ごしたいと考えているはずです。

 

そんな老後の生活の柱となるのは、将来受け取ることができる「年金」です。

 

私達が将来受け取る公的年金は働かずに得られる収入、つまり「所得」になるので税金や確定申告の必要性が発生します。

もちろん、全員ではありませんし、一般的に会社に勤務していたサラリーマンや公務員からみれば馴染みが薄いため確定申告には疎いはずです。そのため、今回の記事では老後に私達が受け取ることができる年金には税金がかかるのか?それとも被課税なのかを解説しつつ、確定申告の必要性に関して説明していきたいと思います。

 

老後の大きな収入源だけに、しっかりと年金と税金の関係についてを知って老後計画を考えておきましょう。

 

年金は「所得」になるので課税の対象

年金への課税

公的年金は国から支給される老後のための生活費になりますが、所得に該当する以上は基本的に課税の対象となります。ただ、公的年金のなかでも障害年金と遺族年金は非課税となっています。

 

すなわち、公的年金のなかでも老齢基礎年金と老齢厚生年金の2つは課税対象となりますが、障害年金と遺族年金の場合には死亡や障害を支給事由とすることから非課税となるわけです。

ただ、障害年金と遺族年金の被課税に関しては一定以上の老齢年金は課税の対象になるので注意が必要です。

老齢年金は雑所得扱い

年金の種類によって課税か非課税かが異なりますが、公的年金や厚生年金などの老齢年金は雑所得として扱われ、「所得税・復興特別所得税・住民税」などの対象となります。

 

基本的な所得の計算は、年金額から国民健康保険料(後期高齢者医療保険料)や介護保険料などの社会保険料をはじめとした各種控除を差し引いたうえで税率(所得税率・復興特別所得税率)を乗じて計算を行います。確定申告の経験がない人からすれば馴染みがないかもしれませんが、将来の年金受給額をイメージしたうえで下記を参考に考えてみましょう。

課税所得金額 所得税率 控除額
195万円未満 5% 0円
195万円以上330万円未満 10% 9万7,500円
330万円以上695万円未満 20% 42万7,500円
695万円以上900万円未満 23% 63万6,000円
900万円以上1,800万円未満 33% 153万6,000円
1,800万円以上4,000万円未満 40% 279万6,000円
4,000万円以上 45% 479万6,000円

参照:国税庁「所得税の税率」

上記を見て分かるように、所得税は課税対象となる所得が上昇するほど税率が上がります。つまり、公的年金の受給額が多い人や年金以外にも別の収入源があれば、年金は雑所得として扱われて合算計算されるため所得税も高くなるということになります。

 

仮に国民年金と厚生年金の受給平均額から考え得るのであれば国民年金は月額55,946円厚生年金は144,366円となり、収入を年間ベースで見ると約240万円ほどとなり、控除額は上記の表から9万7,500円、税率は10%ということになります。

また、住民税に関しても所得割と呼ばれる所得に比例して課税されることから、年収の多さが税金の高さに直結することになります。そのため、老後に自身がどれぐらいの年金を貰えるのかを含めて知っておきましょう。

 

老後には年金額からこれらの所得税を特別徴収した残りが受給できますが、年金以外の株の配当金や不動産収益がある場合には確定申告が必要になるので忘れずに考えておくようにしてください。

 

公的年金で発生する税金の計算や控除について

年金の源泉徴収計算

年金が雑所得として扱われることから、場合によっては確定申告が必要となります。ただ、源泉徴収という言葉を聞いたことはあっても、会社に努めていたサラリーマンからすれば自身で確定申告をした経験がある人は少ないため、計算の方法など細かいことが分かる人は多くないでしょう。

 

そこで、次は年金における源泉徴収の計算方法を解説していきたいと思います。また、どのような控除があるのかについてもお伝えしていくので、計算方法とともにどれぐらい手元に収入が残るか把握しておきましょう。

 

確定申告で適応できる各種控除

公的年金は雑所得扱いになることから特殊な計算方法を用いるわけではありません。ただ、収入が年金の場合や世帯状況によって様々な控除を受けることができるため、それら控除も合わせたうえで計算する必要があります。

 

例えば年間医療費を控除したり、生命保険や個人年金の保険料の一部を控除することも可能となっており、基礎控除や公的年金控除などを含め、人によって受けられる控除は異なるため以下の表を参考に確認してみましょう。

(各種控除一覧・2022年)
控除の種類 対象者 月割控除額(1カ月あたり)
公的年金等控除、基礎控除相当 受給者全員 1ヵ月の年金支払額×25%+65,000円
(下限は65歳未満が9万円、65歳以上が135,000円)
配偶者控除 控除対象の配偶者がいる人 その年12月31日時点までで70歳未満の配偶者32,500円、70歳以上の配偶者40,000円
扶養控除 12月31日時点までに16歳以上の扶養親族がいる人 32,500円×人数
特定扶養親族控除 12月31日時点までに19歳〜23歳の控除対象扶養親族がいる人 52,500円×人数
老人扶養親族控除 12月31日時点までに70歳以上の控除対象扶養親族がいる人 40,000円×人数
普通障害者控除 本人・控除対象配偶者・扶養親族のいずれかが障害状態にある場合 22,500円×人数
特別障害者控除 本人・控除対象配偶者・扶養親族のいずれかが重度の障害状態に場合 35,000円×人数
同居特別障害者控除 重度の精神障害状態にある控除対象配偶者、扶養親族と同居している場合 62,500円×人数

控除のなかでも公的年金控除と基礎年金控除は誰でも適応することができます。

公的年金における源泉徴収額の計算方法

基本的に年金受給のみで老後を生活するのであれば所得税は5%〜10%程度になりますが、次は公的年金のみでの収入で暮らす場合の非課税所得について説明していきたいと思います。

 

年金生活者の所得税の計算は次の3つの手順で行います。

  1. 公的年金による所得の計算方法→公的年金の収入金額-公的年金等控除額
  2. 所得税の課税所得の計算方法→公的年金による所得-基礎控除-各種控除
  3. 所得税の計算→課税所得×税率

これらをもう少し分かりやすく合わせたものは以下のようになります。基本的には年金受給額からそれぞれの控除額を引き、収入に合わせた所得税率と復興特別所得税から計算していきます。

所得税 = ( 年金受給額 × 各種控除 ) ×5.105%(所得税5%×復興特別所得税1.021%)

そして、65歳未満であれば公的年金控除額は60万円になり、基礎控除は48万円です。他の控除に当てはまらない場合には公的年金の収入金額が108万円以下であれば公的年金に税金は発生しません。

ただ、これらに加えて厚生年金もあれば恐らく108万円を超えることになりますが、後ほど説明する確定申告不要制度を利用すれば基本的には非課税となります。そして、配偶者控除などを含めればさらに控除額は大きくなり、146万円まで非課税所得は増えます。

 

もしも非課税とならない場合には、前途であったように雑所得で発生する所得税率をかけて算出する所得税率と10%前後の住民税率をかけた学に均等割を加算した住民税が納めるべき税額となります。

65歳以上の非課税所得は158万円以下

65歳未満の場合には公的年金控除額は60万円となりますが、65歳の年金生活者の場合には各種控除がない場合には公的年金等控除額は110万円、基礎控除は48万円となり、公的年金控除額が大きくなります。もちろん、これは他に加えることができる控除項目があれば非課税額が増える事となります。

 

もしもそれら非課税額を超えてしまう場合には、前途と同じように計算して納めるべき税額を計算する必要があるので注意しておきましょう。

 

確定申告は必ず行う必要がある?

年金の確定申告

ここまでの内容で公的年金には税金が発生する場合もあるものの、一定以下であれば非課税ということが分かりました。ただ、それとは関係なく一定上の収入がある場合には確定申告が基本的には必要となります。

次は確定申告が必要なパターンと不要なパターンを解説したいと思います。

確定申告を行う必要があるケース

確定申告が不要なケース

公的年金が総合して400万円を超えるといったケースは余り多くありませんが、老後も働くというひとであれば年間の収入が20万を超えることになると思いますので、老後に年金を受給しながら働くひとは基本的には確定申告が必要となるはずです。

 

この2つの条件を満たしていた場合には確定申告が不要となり、受給する年金から自動で税金が源泉徴収されます。

必要になる手続きは毎年「扶養親族等申告書」を提出するだけになりますが、この扶養親族等申告書は各種控除を受けるために必要な書類となっており、これによって公的年金等控除や基礎控除、配偶者控除、扶養控除を反映した所得税や住民税が、年金から自動的に天引きされる形となります。

 

老後の年金に関する「税金」はこの3つを覚えておこう

ここまでの内容で年金には税金が発生する場合があり、確定申告の必要性もあることをお伝えしました。ただ、計算方法などを含めて少しややこしいと感じたひともいるはずです。

そのため、基本的には以下の3つの条件を覚えておき、確定申告の必要がある場合は各種控除を申請してしっかりと申告しましょう。

  1. 2ヶ所以上から年金を貰っている
  2. 年金以外の収入がある
  3. 医療費控除や生命保険控除を受ける

また、単純に条件を満たしていたとしても金額次第では確定申告の是非も異なりますので、今から年金だけの生活だけでは不安を感じるひとは、別の収入源もあるうえで確定申告をやる前提の老後を迎えることになるはずですので、しっかりと今から備えておきましょう。

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