新型コロナウイルスでの経済悪化や金融庁の発表した老後2000万円不足問題以降、20代でも投資を始める人が少なくありません。
ただ、メディアやSNSの影響か、20代という若い世代は投資先として不安定な仮想通貨や初心者には難易度が高い運用方法に目がいきがちになっています。しかし、投資において華やかな儲け方や一攫千金のような形で短期で大きな利益を得るのは、ごく一握りです。
実際には大きく儲けるまではに時間がかかりますし、その事を理解せずに大きなリターンを得ようとリスクを顧みなかった結果、運用資金さえ失ってしまう人も多くいます。
そこでオススメしたいのが、「地道に利益を積み重ねていく少額投資」です。
少額投資では、まとまった資金がなくても運用を開始することができるので、20代という年収があまり多くない世代でも取り組みやすく、積立投資のように毎月一定額を長期的に運用することで時間を使って大きく増やすことができます。
また、将来発生する結婚費用や住宅費用、子供の教育や老後などの大きなお金が必要になるライフプランにおいても、大きな出費にならない範囲で資産を増やしていける少額投資が、20代という若い盛大にはうってつけの投資方法でもあります。
近年では、多くのマネー雑誌や新聞などでも「若いうちに資産運用を勧めた方が良い」という趣旨の内容が多くなっており、今回の記事では、20代でも少額投資を始めることが如何に将来有利になるかを考えたいと思います。
20代〜30代の「つみたてNISA 」利用者はわずか4割
少額で地道に資産運用していくに当たって知っておきたいのが、「つみたてNISA(少額投資非課税制度)」です。2018年から開始されたつみたてNISAは、年間の積立額が40万円以内であれば投資で発生した利益が最長で20年間非課税になる制度で、本来投資でかかる20%の税金がなくなりお得に利益を残せる優遇制度です。
少額での長期運用、積立て投資では利用しないという選択はありえないと言っていいですし、20代のうちの収入も少なく、支出も多い間には是非とも利用した制度です。
年間40万円であれば、約33,000円以内の額を積み立てることで税金がかからずに運用できます。そのため、その分税金を払わないで良いことを考えれば、下手に運用額を大きくするよりも手元に大きな利益を残すことができます。
しかし、金融庁が平成30年の7月に発表した「NISA(一般・つみたて)の現状」によると、つみたてNISAの新規口座開設者のうち、20代は16%で30代は25%と合計しても4割ほどで半数にも届かないほどです。
実際には有利な制度にも関わらず、意外にも「若い世代が投資に利用している制度」とは呼べないほど認知がなされていないのが現実です。
しかし、少額で運用を始めていくのであれば、つみたてNISAを利用することは必須であり、20代だからこそのメリットが多く存在しています。
20代のうちに見据えておくべき人生の三大出費
20代はこれから子供の教育費・住宅の購入、そして老後の生活費といった人生の三大出費が待ち構えています。老後の生活費自体はまだ先の話になるかもしれませんが、身近な結婚から住宅費用といったものを意識する人も増えていくるはずです。
日本政策金融公庫の「教育費負担の実態調査(2017年度)」によると、高校入学から大学卒業までに子ども1人にかかる入学費と在学費の合計は平均935万3000円です。また、住宅購入費については、基本的に物件価格の1割が頭金として必要になり、住宅ローン物件価格の9割が融資を受けて購入するとします。
新築か中古、戸建てかマンションかによって異なりますが、物件購入には一般的に物件価格の5〜10%程度の諸経費が必要です。
このケースでは頭金とは別に数百万必要になる見込みで、仮に3000万円の住宅を購入する場合、自己資金としては「頭金+諸経費の計600万円」を準備しておく必要があります。
金融庁の報告で老後の資金が2000万円不足すると聞いて焦りを覚えた人も多いと思いますが、実際に結婚後の子供の教育費や住宅ローンでは、それに匹敵するお金が必要になることを知っておかなくてはいけません。
もちろん、現金ですぐに支払う額は大きくないかもしれませんが、20代のうちに資産形成を始めておくことで、今後発生する大きな出費に余裕を持って備えることが可能になるはずです。
20代は少額での資産運用で十分な理由
20代が資産運用を始める際に最も不利な点は運用資金が少ないという点にあります。しかし、それを補えるほど20代は「時間」という資産を多く持ち合わせています。
老後資金を含め、まだ先の話のように将来の事を俯瞰してしまう若い人も多いですが、資産は多くて困ることはありませんし、万が一のために準備しておくことは必ず今後に役立ちます。
次は、20代という若いうちから少額でも良いので地道に資産運用を始めた方が良い理由について、具体的にお伝えしていきたいと思います。
一時的な元本割れも長期運用で利益になりやすい
20代では、他の年代に比べて「多くの時間」が資産となります。
投資において、この運用出来る期間が多いというのは非常にリスクを抑えるでき、毎月の投資額が少なくても10年後、20年後という積立てで元本以上に資産が増えている可能性が高くなります。
例えば、つみたてNISAを利用して毎月2万円を運用利回り1%〜3%(年率)の投資信託で20年間積立て運用したと仮定します。そうすると、「2万円×240ヶ月=480万円」が積立てられるのに対し、単純計算で以下のような利益が発生します。
運用利回り | 20年後の資金 | 利益 |
利率1% | 約531万円 | 51万円 |
利率2% | 約590万円 | 110万円 |
利率3% | 約655万円 | 175万円 |
投資信託などの投資先の運用成績次第になりますが、少なくとも毎月2万円をつみたてNISAで運用することで、銀行預金しておくだけよりも遥かに資産が大きくなっているのが分かります。
実際に運用資金を収入が上がって増やしてもいいですし、長い期間を運用することで複利効果を得ることもできるので、さらに資金を雪だるま式に増やすことが可能です。
また、非課税の範囲内である24万円を積立投資しているため、利益に対して税金は発生しません。仮に相場急変して元本割れを起こしてしまっても、運用期間が長いので損失を超える利益を出す機会も多くなります。
少ない資金でも毎月コツコツ積立てていくことで、生活に負担がかからない範囲で資産形成できるだけではなく、資金や時間による分散投資も自然に行えるため、資産が減ってしまう可能性を抑えることが意識せずともできるのも利点でしょう。
株式市場の値動きを追ったり、分析によって長期的な利益を狙うという株式投資を行う人も多いですが、個別株の株価の分析や企業価値の水準を見ていくのは長い目で見れば非常に労力がかかります。
その点、投資信託などの運用を専門家に任せられる投資商品であれば、初心者でも少額で運用をすべて任せることができるのでオススメです。
投資は長期間継続することで、短期的な損失に左右されずに投資対象の成長の恩恵を受けることができるので、ぜひとも若いうちから少額でも良いの始めることを意識してみてください。
長期運用で積み立てれば購入単価を抑える効果もある
投資でリスクを軽減する方法として有名なのが分散投資です。
分散投資では、主に以下の3つを分散することで損失が大きくなるリスクを抑えることが可能になっています。
- 資産の分散
- 時間の分散
- 地域の分散
資産の分散では、まとまった資金を一気に投資するのではなく、複数回に資産を分散させる方法で、時間の分散では購入タイミングを分散させる方法です。
ここまでは積立てNISAを利用することで自然と行うことができますが、地域の分散は特定の投資対象に投資するのではなく、国債や外国株式、金といった投資対象を複数に別けて運用する方法です。
これに関しては投資信託の種類や運用先を選定する必要がありますが、最初に購入した価格が高く、購入できる口数が少なくとも、分散して購入していくことで価格が安くなったときには多くの口数を購入することができます。
こうすることで、購入単価を抑えることができ、投資元本以上の運用成績を出せる可能性が長期運用では高くなります。つまり、積立投資によって購入するタイミング分散させることで、価格の下落時にも味方につけることができるので、元本割れのリスクを軽減が期待できるというわけです。
積立投資で商品の選び方
若いうちから少額でも良いので積立投資していくことは、資産を築くうえでは非常に有効的ですが、コツコツ投資をしていればどんな商品に投資してもいいわけではありません。
金融庁が2017年に発表した「つみたてNISAについて」では、国民が安定的な資産形成を行うための長期の積立てや分散投資は有効と述べられています。
さらに、投資対象を国内だけではなく、海外などグローバルに分散させることで、世界経済の成長と合わせて恩恵を得ることができるというメリットがあるとも指摘されており、長期的に積立て投資を行うのであれば、国内の投資先だけではなく世界の金融商品に幅広く投資することで、世界経済の成長に合わせて資産を増やす機会が多くなることを示唆しています。
実際につみたてNISAでは、1つの商品で世界各国の株式に投資できるものが対象になっています。例えば、約70カ国の銘柄で構成されるMSCIという指標に連動する商品であれば、「全世界株式インデックス・ファンド」や「eMAXIS 全世界株式インデックス」などがあります。
また、48カ国の約7400銘柄で構成されるFTSEという指標に連動する商品では、「SBI・全世界株式インデックス・ファンド」や「楽天・全世界株式インデックス・ファンド」などが該当します。
このように、1つの投資信託で世界の株式に幅広く投資できる商品のみが対象になっているので、「投資経験や知識がなくて分からないという人」でも、幅広い投資商品から対象のものを絞って選ぶこともできます。
あえて自身で利益が多く発生しそうな銘柄や流行の金融商品を購入してしまわないようにしましょう。
若いうちは運用出来る時間も多くありますが、それでも若さからくる欲から、リスクの高い投資商品を選択してしまう傾向があるので注意する必要があります。
積立投資は長いほど資産を増えやすい
投資を始める年代は違えど、資産を運用していくにあたっては運用期間が長ければ長いほどリスクを抑え、利益が発生する可能性が高くなります。
保有期間が1年よりも5年のほうがリスクを軽減できますし、5年よりも20年のほうがさらにリスクを軽減して利益が増える機会も増えます。元本割れの危険性を防ぎ、資金が増えるというのは、こういったリスクと向き合いながら定期的にポートフォリオを見直している人です。
若いうちは「一攫千金」「いずれは大きく稼いで投資で生活したい」といった考えから無計画に投資を始めてしまう人が多くなっていますが、やはり無理のない範囲の資金を毎月積立て、長期的な運用していく人が最も資産を増やすのに成功しています。
時間が有限ですが、それでも若いほど多くの時間を使うことができますので、つみたてNISAのように投資初心者でも資産形成をしやすい制度の利点を活かしつつ、20代に最適な少額の積立投資を検討してみてはいかがでしょうか。
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