昨今、日本では人生100年時代といわれていますが、「老後なんてまだまだ先の話」と考えていても、「老後のお金は大丈夫かな…」なんて心配も多くの人にあるはずです。日本人の平均寿命はどんどん伸びて、現在では男女ともに80歳を超えていますが、長寿だからこそお金を貯めるうえでは有利になる事もあることをご存知でしょうか。
それは気づかないうちに大きな成果になっている「利息」です。
お金を借りる時や資産運用する時に必要になる基礎知識になりますが、なかでも利息分も合わせてさらに利息が付いていく「複利」は、長い人生の中で資産を少しずつ築いていくのに非常に役立ちます。
「そんな事知っている!」という人もいれば、聞き馴染みがなく「どういったものか詳しくは…」といった人まで様々だと思います。ただ、普段生活をしていて複利の話が出てくることはありませんが、単利であれば誰でも知っているはずです。
この単利と同じ金利の一種ではありますが、違いを知ればかなり差が生じる効果があると分かるのが複利です。
複利は資産形成などの投資で頻繁に出現する言葉ですが、実際にどういったものなのか?そして、単利と違い複利を上手く活用することでどのような効果が得られるのかを今回は解説していきます。
この複利は、アインシュタインに20世紀最大の発見と言わしめたほど凄まじい効果があり、積立てなどの長い時間をかけて資産を増やしていく運用方法で最も力を発揮するので、複利の基本と仮に10年以上複利運用した場合の推移を見ていきたいと思います。
金利の一種である「複利」とは?
複利とは、複利法によって計算された利息の計算方法の1つで、一定期間ごとの利息を元本に組み入れて増えていった元本に対してさらに利息が計算されるものです。
これは例えば、10万円を預けて年利10%だった時には1年後11万円になり、2年後は11万円に増えた資金に対して年利10%が発生するので12万1,000円になるという形です。
イメージしやすいように、年率10%で5年間複利運用で増やしてみた表を以下に用意したので確認してみましょう。
経過年数 | 繰越元本 | 利息 | 増分額 | 増加額(累計) |
1年 | 110,000円 | 10%/年 | 10,000円 | 10,000円 |
2年 | 121,000円 | 10%/年 | 11,000円 | 21,000円 |
3年 | 133,100円 | 10%/年 | 12,100円 | 33,100円 |
4年 | 146,410円 | 10%/年 | 13,310円 | 46,410円 |
5年 | 161,051円 | 10%/年 | 14,641円 | 61,051円 |
複利を活用した場合には、上記の表のように預けた資産に対して増えたお金も組み込んで計算されるというわけです。1年後には1万円で2年後には1万1,000円になるので、同じ年率でも利益が雪だるま式に増えていくのが特徴です。
複利とは違う単利とは?
複利とは違った金利に「単利」というものがあり、この単利は預けた資金にのみつく利息です。例えば、10万円の資金を預けたと仮定すると、預けた資金のみにしか単利は発生しないので、年率10%だった場合に1万円が利息として発生します。
預けてから1年後には11万円と、1年後は複利と増える額は同じです。しかし、2年後も1万円なのでこの時点で複利と比べると1,000円の差が発生します。
「たったこれだけ?」と思うかもしれませんが、これが単利ではなく複利であれば5年、10年、20年と続いていけば信じられないような金額に膨れ上がることになります。以下は単利で5年間年率10%で増やした表です。
経過年数 | 繰越元本 | 利息 | 増分額 | 増加額(累計) |
1年 | 110,000円 | 10%/年 | 10,000円 | 10,000円 |
2年 | 120,000円 | 10%/年 | 10,000円 | 20,000円 |
3年 | 130,000円 | 10%/年 | 10,000円 | 30,000円 |
4年 | 140,000円 | 10%/年 | 10,000円 | 40,000円 |
5年 | 150,000円 | 10%/年 | 10,000円 | 50,000円 |
1年以降も同じ金額しか増えないのが単利です。
1年以降は増えた資金に対しても利息が発生する複利とは違うお金の増える仕組みになります。
複利のメリットを活かすのは「時間」
重利(じゅうり)と呼ばれることもある複利ですが、発生した利息をそのままにしておくだけでさらに大きく資金が増えていく仕組みになります。さきほど単利と複利の違いを説明しましたが、やはり時間が増えれば増えるほど利息で発生する利益が大きくなるのは分かると思います。
ただ、単利の場合は単純に発生する利息の金額を増やすだけでいいですが、複利では時間をかけるほど大きくなりますので、あまりイメージが沸かないという人もいるはずです。そのため、次は実際に100万円を年率5%で預けて複利で長期間預けた場合、どれぐらいの金額になったのかというシミュレーション結果を10年間〜40年間で見ていきたいと思います。
10年間の複利運用シミュレーション結果
10年間といえば、資産形成を目的とした運用としては長い運用とはいえませんが、それでも10年間という年月は決して短い期間とはいえません。
ただ、将来を見据えて複利を活用した金融商品を購入する人も増えているので、まずは最低10年預けた場合の複利運用の結果を見ていきましょう。
経過年数 | 繰越元本 | 利息 | 増分額 | 増加額(累計) |
1年 | 1,050,000円 | 5%/年 | 50,000円 | 50,000円 |
2年 | 1,102,500円 | 5%/年 | 52,500円 | 102,500円 |
3年 | 1,157,625円 | 5%/年 | 55,125円 | 157,625円 |
4年 | 1,215,506円 | 5%/年 | 57,881円 | 215,506円 |
5年 | 1,276,281円 | 5%/年 | 60,775円 | 276,281円 |
6年 | 1,340,095円 | 5%/年 | 63,814円 | 340,095円 |
7年 | 1,407,099円 | 5%/年 | 67,004円 | 407,099円 |
8年 | 1,477,453円 | 5%/年 | 70,354円 | 477,453円 |
9年 | 1,551,325円 | 5%/年 | 73,872円 | 551,325円 |
10年 | 1,628,891円 | 5%/年 | 77,566円 | 628,891円 |
100万円というのは大きい金額ですが、それでもどうしても貯められないかというとそうではないはずです。
その100万円を年率5%で複利を活用してどれぐらい増えるのかを見ていくと、10年目で1,628,891円となり、累計した増加額は628,891円にもなります。
この金額を大きいか少ないかと捉えるのか人それぞれですが、それでも何もしていなくてもここまで増える事を考えると複利の凄さが分かります。
20年間の複利運用シミュレーション結果
20年間を複利で運用するというのはかなり時間を要するように感じますが、早い段階で資産設計を始めた人や本格的に資産運用を始めた人からみれば、基本ともいえる運用年月です。
100万円を20年間複利で増やした結果は以下になります。
経過年数 | 繰越元本 | 利息 | 増分額 | 増加額(累計) |
11年 | 1,710,335円 | 5%/年 | 81,444円 | 710,335円 |
12年 | 1,795,851円 | 5%/年 | 85,516円 | 795,851円 |
13年 | 1,885,643円 | 5%/年 | 89,792円 | 885,643円 |
14年 | 1,979,925円 | 5%/年 | 94,282円 | 979,925円 |
15年 | 2,078,921円 | 5%/年 | 98,996円 | 1,078,921円 |
16年 | 2,182,867円 | 5%/年 | 103,946円 | 1,182,867円 |
17年 | 2,292,010円 | 5%/年 | 109,143円 | 1,292,010円 |
18年 | 2,406,610円 | 5%/年 | 114,600円 | 1,406,610円 |
19年 | 2,526,940円 | 5%/年 | 120,330円 | 1,526,940円 |
20年 | 2,653,287円 | 5%/年 | 126,347円 | 1,653,287円 |
20年ともなると15年目で100万円が2倍になり、最終的には2,653,287円まで増加しています。
ここまでくると累計増加額も1,653,287円もかなり大きい金額です。
年間で10万円以上のお金が増加していくので、ここからはより早いペースで増加していきます。
30年間の複利運用シミュレーション結果
100万円を30年間を複利で運用することができれば、最終的に4,321,918円になります。
30年という年月を複利で運用している人も多くはありませんが、それでもここまでくると資産が増えていくのを楽しみながら見ていくことができるはずです。
経過年数 | 繰越元本 | 利息 | 増分額 | 増加額(累計) |
21年 | 2,785,951円 | 5%/年 | 132,664円 | 1,785,951円 |
22年 | 2,925,248円 | 5%/年 | 139,297円 | 1,925,248円 |
23年 | 3,071,510円 | 5%/年 | 146,262円 | 2,071,510円 |
24年 | 3,225,085円 | 5%/年 | 153,575円 | 2,225,085円 |
25年 | 3,386,339円 | 5%/年 | 161,254円 | 2,386,339円 |
26年 | 3,555,655円 | 5%/年 | 169,316円 | 2,555,655円 |
27年 | 3,733,437円 | 5%/年 | 177,782円 | 2,733,437円 |
28年 | 3,920,108円 | 5%/年 | 186,671円 | 2,920,108円 |
29年 | 4,116,113円 | 5%/年 | 196,005円 | 3,116,113円 |
30年 | 4,321,918円 | 5%/年 | 205,805円 | 3,321,918円 |
30年目にして毎年20万円を超える利益が発生するようになります。
ここまでの累計増加額は3,321,918円と3倍を超えるほどの増加率。
複利で30年間も年率5%を維持するのは簡単ではありませんが、それでもここまでの大きさに育つことを考えると、生まれた利益を他の投資に積極的に繋げる人もいるかもしれません。
40年間の複利運用シミュレーション結果
40年という年月は日本人の平均寿命の半分にあたる年月です。
かなり膨大な時間を使った複利での結果は最終的に7,039,941円にまで膨れ上がりました。
1年目の100万円から考えると7倍もの金額になりますが、この結果を見て「大きく増えた」と考えるか「あまり増えなかった」と考えるのは人それぞれです。
経過年数 | 繰越元本 | 利息 | 増分額 | 増加額(累計) |
31年 | 4,538,013円 | 5%/年 | 216,095円 | 3,538,013円 |
32年 | 4,764,913円 | 5%/年 | 226,900円 | 3,764,913円 |
33年 | 5,003,158円 | 5%/年 | 238,245円 | 4,003,158円 |
34年 | 5,253,315円 | 5%/年 | 250,157円 | 4,253,315円 |
35年 | 5,515,980円 | 5%/年 | 262,665円 | 4,515,980円 |
36年 | 5,791,779円 | 5%/年 | 275,799円 | 4,791,779円 |
37年 | 6,081,367円 | 5%/年 | 289,588円 | 5,081,367円 |
38年 | 6,385,435円 | 5%/年 | 304,068円 | 5,385,435円 |
39年 | 6,704,706円 | 5%/年 | 319,271円 | 5,704,706円 |
40年 | 7,039,941円 | 5%/年 | 335,235円 | 6,039,941円 |
累計の増加額は6,039,941円と40年間で約600万円増えた結果になりました。
毎月30万円を超える利益が発生するようになった状態ですが、仮に20歳から複利運用を始めて40年経てば老後間近な年齢です。
「退職金」「年金」を考慮にいれて老後を意識すると、貯金額は人によって異なりますが、100万円が700万円にまで増えることを考えれば、老後に向けた時間を複利を使うことで安心できる資産設計を行うことも可能になります。
複利のデメリットは利息に「税金」が発生する
単利の場合には利息が発生した時点で自動的に課税がされ、このような課税方式を厳選分離課税といいます。しかし、複利の場合には上乗せされた利息に対して税金が引かれていないため注意が必要です。
複利を使って利益を発生させるには自身で運用するか、あるいは複利運用されている金融商品を購入することになります。
そのため、発生した利息(利益)に対して税金を収める義務が発生します。
ただ、定期貯金のような利息を元本に再投資するような場合には、満期時に確定した利息に対して一定の税金が引かれる満期時一括課税を選ぶことができる商品もあるので、その場合には確定申告などの処理を行う必要はありません。
複利効果が得られる金融商品
複利の仕組みと結果を見てみると、複利を魅力に感じる人は多いと思います。
しかし、実際に「複利で資産を増やすにはどうすればいいのか?」
という疑問は複利を知ったばかりの人は思い浮かぶはずです。
そこで、次は複利の効果を得ることが方法についてお伝えしたいと思います。
複利効果を得るためには基本的には3つあります。
・積立預金
「積立預金」は預貯金があまりできないといった人には最適な商品になっています。
毎月指定した口座から自動的に引き落とされるような形になり、1万円から始めることもできます。
複利を期待するなら利率の高い定期預金を選ぶことが重要ですが、残念なことに日本の積立商品などは基本的には利率が低く、元本保証もされていないことが多いため、海外の積立て商品など元本が保証された利率の良いオフショア投資なども視野にいれましょう。
・外貨建MMF
外貨建MMFは円建てではなく、外貨建て公社債や短期金融商品で資金を運用する投資信託になります。日々の収益を分配し、毎月最終取引日に再投資するため複利の効果を得ることができます。
資源国などの高金利通貨建ての商品が人気になっています。
・元利自動継続
定期預金の中には元利自動継続と呼ばれる手法も存在しています。
一般的な定期預金の3年未満のタイプの場合、通常単利で計算されますが、満期日に元本の利息を加えた分を自動継続にすることで複利の恩恵を得ることが可能になります。
これは、1年のスーパー定期や1ヶ月的でも元利自動継続にした契約にしておけば、利息が元本に組み込まれる形になるので、複利と同じ効果で資産を増やしていくことが可能になります。
「オフショア投資」なら国内よりもオススメ
毎月1万円でも2万円でも積立てる事ができれば、資産を貯蓄しながらも複利の効果で時間と共に増やすことができます。
ただ、残念なことに日本の積立て商品は利率があまり高くないの実態です。
ここで1つ紹介したいのが、オフショア投資を呼ばれる海外の金融商品を購入する方法です。国内の証券会社に口座を開いて購入するのではなく、海外で口座開設して金融商品を購入する場合は日本にはない恩恵を得ることができます。
単純に購入できる金融商品の数が多くなることもそうですが、海外は日本よりも金融経済が進んでいることもあり、元本保証や一定期間の積立てでボーナスを受け取れたりと日本にはないサービスが提供されています。
また、手数料が日本よりも半分以上低いのに利率が高いのがオススメのポイントです。
複利は時間を活用すれば誰でもできる
資産運用は少ない額から行えるものも多くなっていますが、それでも投資経験のない人や本格的に大きく資産を築きたい人からすると「大きい資金」が必要だと考えている人も少なくありません。
しかし、複利の仕組みを理解すれば誰でも複利の恩恵を得られることは分かったはずです。
あとは少額でも良いので「どれだけ時間活用できるのか」の違いしかありません。
複利で運用するのなら、預け入れしている年数が長ければ長くいほど得をするというのは10年〜40年までのシミュレーションで分かったと思います。
単利で預けて1年に1回の利息が発生したとしても微々たるものですし、何より出金手数料で消えてしまうという人の方が多くなっています。
現在銀行の預金しているお金の一部や、毎月の給料から1万でも2万でもいいので20代や30代など若い段階で複利運用をスタートさせるのが理想的かもしれません。
たとえ最初は元本が少なくても雪だるま式に増えていきますし、毎月少しずつ積立てていけば年数を長くするほど複利で得られる効果は高まり、合計額も増えていきます。
もしも将来のことを考えて資産構築を検討しているのなら、ぜひ複利の効果が得られるように預け先を一度検討してみましょう。
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