不動産投資では戸建てからマンションなどの色々な種類の物件へ投資することが可能ですが、混合して考えてしまう人も多い「マンション」と「アパート」の違いはご存知でしょうか。
2つの物件は共同住宅を表す言葉になりますが、不動産投資に関わらずマンションとアパートを同じに捉えている人も少なくありません。普段なんとなく違うものという認識はあるものの、両者の違いを説明出来る人は意外と少ないはずです。
しかし、マンションとアパートは構造や階建てによって大まかに区別がされており、購入する際には防犯性や遮音性の観点からも賃貸に大きく関わってくるため、この両者の違いを知っておくのは重要になります。
今回の記事では、不動産投資でアパート経営やマンション経営を考えている初心者向けに、この2つの違いが購入金額や空室リスク、管理費にどのように影響を及ぼすのかを比較解説していきたいと思います。不動産投資で考えると、マンション経営とアパート経営は似ていたとしても大きく違う点があるので、両者の違いを知ってどちらへ投資するのがあなたに合っているのかを判断出来るようになりましょう。
マンション経営とアパート経営の違い
集合住宅では二分されるマンションとアパートですが、恐らく多くの人が抱いているイメージとしては「アパートの方が家賃が安く、マンションの方が設備や防犯性が優れている」と思い浮かべる人が多いでしょう。
しかし、実際にはどのような違いがあるかといえば、意外なことに明確な定義はなく、物件のオーナーやハウスメーカー、不動産会社が各々決めた基準で判断しているに過ぎません。
あくまでも呼び方が異なるだけで、不動産登記簿謄本でも建物の構造や階数、床面積といった項目はあるものの、「アパート」や「マンション」といった建物の種類を明確に記した表記はありません。
ただ、明確な定義がないからといって違いがないわけではなく、厳密な定義がないだけで一般的な使い分けの基準があり、基本的には建物の構造や階数を基準に区分されることが多くなっています。もちろん、これはハウスメーカーや不動産会社などによって判断基準が異なりますが、一般的には以下の基準で区分されることが多くなっています。
- マンション・・・3階建て以上の重量鉄骨造・鉄筋コンクリート造の共同住宅
- アパート・・・3階建て以下の木造・軽量鉄骨造の共同住宅
比較してみると階数と建築素材によって呼び方が変わっていますが、当然マンションの方が不動産投資においても賃貸として借りる場合についても高い傾向にあります。
それでは次にマンション経営とアパート経営をする場合には、両者の違いからどのような事がリスクになり、対策が必要になるのかを知るためにも、2つを比較した際に優れている特徴を解説したいと思います。
マンションとアパートの特徴で生じる3つの違い
マンションにおける最も大きなメリットは「耐久性」「防音性」「防犯性」の3つになります。これらの特徴はアパートと比較した際に発生する優れているメリットですが、住んだことがある人は感じたことがある人も多いはずです。ただ、不動産投資を行なうオーナーとしてみれば、これら3つの特徴は入居者が大きく求めるポイントだということも理解できると同時に、物件の購入金額が高くなる項目でもあるため悩みどころでもあります。
ただ、これらを軽視していると入居者を集められない状況だけではなく、長期的な運用が前提の不動産投資で最終的に損失に転換してしまう可能性も考えられますので注意が必要です。実際にこれらの特徴が入居者だけではなくオーナーとして考えたときに如何にメリットになるのかを解説していきたいと思います。
特徴の違い①「耐久性」
アパートと違ってマンションでは、RC造や鉄骨造といった耐久性が高い構造で建築されることが多く、木造のアパートに比べると経年劣化しずらいことが大きな違いとして挙げられます。不動産投資では台風や地震などの災害によるリスクも存在しますが、耐久性の高さを考えればマンションのほうが設備の破損や損壊が起こりづらく、長持ちしやすい傾向にあります。
また、マンションでは利便性の高い地域に建設される傾向があるため、郊外のアパートに比べると空室が発生しずらいという傾向もアパート経営よりも優れている点でしょう。
特徴の違い②「防音性」
共同住宅を住むうえで考えた場合、近隣による生活音や騒音といったものは最もトラブルの種に大きな要因です。近年では犬や猫などの動物に加えてオンラインでの授業やミーティング、ゲームなど会話をしながら室内で作業を行なう人も多くなっているため、知らず知らずのうちに声量が大きくなって近隣からのクレームに発展するケースは少なくありません。
そのため、入居者自身が室内で会話するしないに関わらず、マンションに住む場合の防音性を気にする人は非常に増えています。これはアパートと比べると建物の構造からマンションの方が優れており、一般的に「木造≦鉄骨造<鉄筋コンクリート造」といった順番で遮音性が高くなっています。
最も防音性として機能する鉄筋コンクリート造は、生活音が気になる人や近隣との騒音トラブルを避けたい人、ゲームを会話をしながら室内で行いたい人にオススメなマンションなため、不動産投資では入居してくれる可能性があるターゲットを増やすことへも繋がります。
そして、最も防音性が低い木造アパートでは生活音に配慮して生活する必要があるのはもちろんのこと、鉄骨造に関しても木造よりも頑丈ではありますが防音性はそこまで高くないため、注意が必要です。
特徴の違い③「防犯性」
男性に比べて女性がマンションにも求める条件に防犯性があります。不動産コラムサイトである「いえらぶコラム」で調査したアンケート結果では、一人暮らしの女性が求める条件で最も多かったのが「セキュリティー」であり、44%と半数近くの女性がマンションに対して防犯性を求めていることがわかります。
一概にいえることではありませんが、防犯性はアパートに比べてマンションの方が優れている傾向が多く、分譲マンションが区分マンションとして賃貸に出されている物件では、建物や設備が良いことはもちろんですが、防犯面もしっかりとして女性が安心できる機能性を備えているケースが多くなっています。
ただ、防犯性に関しては物件ごとに備えている機能性が異なるため、気になる人は防犯カメラやオートロック設備などの有無、また新たに備え付ける必要があるのかを考えてみましょう。
マンション経営で得られるメリット
不動産投資ではマンション経営が人気ですが、そのなかでも「ワンルームマンション投資」と呼ばれるものが特に注目されています。これは一棟丸々所有するのではなく、マンションの一室のみを購入することで購入費用を抑えることできるメリットがあります。
基本的に一室だけの購入になるため得られる賃貸収入も少なくなりますが、いきなり一棟購入するよりも購入費用を抑えられるうえ、余裕が生まれれば少しずつ部屋数を増やすといった臨機応変な投資も可能になります。一棟所有するよりも手軽に行えることも人気な理由となっていますが、アパート経営と比べるとどのようなメリットやリスクがあるのかご存知でしょうか。
今人気なマンション経営におけるメリットは、特徴の違いから発生する良し悪しを除けば以下のようになります。
少額から不動産投資可能
不動産投資は大きな資金を必要とするため、基本的には金融機関からの融資を受けることになります。その中でもアパートはマンションに比べると購入金額が安く済ませることが可能となっていますが、マンション経営には「ワンルームマンション投資」があります。
これは先程も紹介した人気の不動産投資ですが、ワンルームマンションであれば数百万円から購入できる物件があるため、アパートを一棟購入するよりも安く購入費用を抑えることができることもあり、利回りを上げることへと繋がります。
「マンションの一室を購入するならアパートの一室を購入すればさらに安いのでは?」と思う人もいるかもしれませんが、アパート一室の売買は一般的ではありません。これは賃貸経営のための効率化された物件なため、長年暮らすことを想定していない分、リスクがワンルームマンションよりも高くなり逆に修繕などで大きな経費が掛かる可能性があります。
共有部や共有設備などに手間がかからない
区分所有のマンション経営の場合には、建物の維持管理をマンション全体の管理会社に対して管理費や修繕積立金を支払うことになるため、専門業者が共有部分の管理や修繕を行なってくれます。もちろん、自主管理を除けばになりますが、それでも余計な手間や費用を一棟購入するよりも抑えることができるため、一室だけ購入できるマンション経営は大きな強みになります。
マンション経営のリスクと対策法
マンション経営では「一棟所有」と「区分所有」があり、「区分所有」の方が人気なのは管理組合に運営を一任できることも理由の1つになりますが、「一棟所有」の場合には管理会社の選定や大規模修繕などの対応が「区分所有」に比べると多くなります。
管理費に関しては管理会社や業務内容によって異なりますが、基本的には家賃の数%を支払うことになるのが一般的ですので家賃収入が減少してしまう可能性があります。
空室が発生しても支払うケースもありますが、家賃収入の数%なため、もしも空室で家賃収入が減少した場合には管理会社に支払う報酬も比例して少なくて済みます。つまり、管理会社に管理を任せること事態は決して収入源と結びつくわけではないということです。
また、空室時には入居者募集や原状回復工事も迅速に行なってくれるため、自己管理して修繕や空室のリスクが増えることがないように注意しておきましょう。
そして、「区分所有」ではマンションの一室ということもあり、一棟所有するのに比べて入居者を募集する際には競争相手が同じマンション内に存在することなります。
一棟所有であれば、その地域の他の物件などが入居者からみれば比較対象となりますが、マンションの一室の場合には同じ条件と環境での募集となる可能性もあり、同じタイミングで空室が発生した際には空室期間が長くなる可能性が考えられます。
また、一棟所有に比べて保有している物件は一室なため、空室が発生すれば収入が入らなくなり、一棟所有のように空室リスクを分散することができなくなるため注意が必要です。
特に所有している物件が事故物件などになってしまった場合にはかなりの痛手になるため、入居者に関しては慎重に精査する必要があるでしょう。
アパート経営で得られるメリット
アパート経営では、マンション経営に比べて購入費用を抑えることができるうえ、戸数の違いからマンション経営よりも負担が少ない傾向になります。アパートの戸数は10〜20戸程度なのに対し、マンションでは一棟50〜100戸以上の物件も珍しくありません。
また、同じ一棟でもアパート経営の方が購入費用は抑えることが出来るため、利回りは不動産投資の中でも最も高い水準にあり、マンション経営に比べると有利といえるでしょう。
そして、基本的には一棟所有となることもあり、空室が発生してもワンルームマンション投資のように「空室=家賃収入ゼロ」ということにはならず、リスクを分散することできます。確かにワンルームマンションに比べると一棟所有なため価格は少し高くなりますが、空室におけるリスクなどを抑えることができ、購入価格もマンション一棟を所有するよりかは安いためオススメです。
アパート経営のリスクと対策法
アパート経営では、長期的な投資である不動産投資においては不利になるリスクもあります。基本的に何十年と購入してから経てば、修繕などの必要がありますが、マンションに比べてアパートでは建築素材の違いから早く寿命が訪れる傾向にあります。
これはマンションにもいえることではありますが、アパート経営の場合には時間が経てば経つほど顕著に現れやすくなるため、事前に理解しておくことは重要です。マンション経営よりも安く費用を抑えることが出来る反面、不利になることもあるアパート経営ですが、基本的に注意するべきリスクは以下になります。
災害リスク
築年数の古い木造や鉄骨造のアパートの場合には、火災が発生すればRC造のマンションに比べうと燃え広がりやすく、全焼する可能性が高くなっています。そのためにも、アパート経営の場合には火災保険に加入するといった対策が必要になります。ただ、新築物件や建築後日が浅い物件であれば、厳しくなった防火基準を通っていることもあり、構造的に入居者が避難するための時間は十分に確保できるでしょう。
また、台風や地震といった災害のリスクもありますので、耐久面で劣っているアパートでは保険や定期的な修繕確認などが求められます。日本は台風と地震の頻度が高いため、ある一定期間ごとに保有するアパートの状態をチェックしておくようにしておきましょう。
空室のリスクがマンションよりも高い
アパートは一般的なマンションに比べると空室率が高いといわれており、これは先程説明した特徴に違いによってマンションの方が優れているためです。また、立地の違いも関係しており、マンションの方が高層化が可能であることから駅前といった利便性の高い場所の建築されることも多くなっているため、空室はアパート比べると更に発生しずらいと考えられています。
アパートの場合には低層建築のこともあって低予算で作ることが出来ることも関係しており、郊外で建築することで採算が合うという理由もありますが、もしも長期的にアパート経営を長期的に安定化させるためには、事前に周辺の情報を集めてターゲットのニーズを抑えておくことが対策方法となります。
また、周辺状況や近隣のアパートやマンションから臨機応変に家賃を見直すことも対策へと繋がるため、リスクを抑えるための事前調査と利回りの計算や考え方などを抑えたうえで物件を購入しましょう。
不動産投資するならマンションとアパートどっちが良い?
それでは、もしも不動産投資を行なう人からみれば、マンション経営とアパート経営のどちらにするべきなのか?これはひとえに人気や優れている点からマンション経営が良いというわけではなく、人によって異なります。
これは物件だけではなく、人によっても適した物件が違うためです。例えばですが、基本的に収入が高い人からすればアパートがオススメです。これは一棟所有することで空室が発生した際のリスクを軽減することができるうえ、予期せぬ修繕にも対応しやすい余裕があるためです。
ただ、マンション経営の場合には一棟マンションと区分マンションがあるため、単純にマンション経営とアパート経営の2つだけではなく、一室所有と一棟所有でも大きな違いがあるので同じものだと考えないように注意が必要です。
次は、実際に「購入価格」「空室リスク」「節税効果」「経費」の4つをもとにどちらへ投資するのがオススメなのかを解説していきたいと思います。
購入価格
不動産投資において、投資物件の価格が高いか低いかというのは大きな判断基準になるはずです。一般的にマンションとアパートではマンションの方が高く、不動産投資と収益物件の情報サイト健美家で掲載されている収益物件の種別ごとの平均価格(2020年1月時点)では、以下のような順番で高額になっています。
- 一棟マンション(約1億6,000万円)
- 一棟アパート(約6,500万円)
- 区分マンション(約1,500万円)
一般的な目安として考えるのであれば、区分マンションは年収500万円のサラリーマンであっても融資を受けられる可能性が高くなっていますが、一棟マンションであれば年収1000万円以上の人が対象となるため、融資のハードルが一気に高くなります。
つまり、年収が高く融資を受けられるのであれば、一棟アパートや一棟マンションなどがレバレッジを利かせて大きな投資をすることができるためオススメになります。
空室リスク
不動産投資で家賃収入がなくなる可能性がある空室リスクは、最も気をつけなければいけないリスクです。先程の説明でもあったように、一般的にマンションよりもアパートの方が立地や建築構造の観点から空室率が高くなっています。
入居者の需要を抑えながら空室のリスクを考慮するのであればマンション物件が良いのは確かですが、基本的にはマンションの場合かなり高額になるため、マンションの一室のみを購入する形になります。ただ、全体的な傾向としてマンションは空室のリスクを軽減できますが、区分マンションの場合には一室しかないため、空室の場合には家賃収入が0円になるということを忘れてはいけません。
もしも予算の関係上区分マンションを検討している人は、近隣の環境やアクセス状況といった利便性を重点的に調べてうえで決めておくことが重要です。出来る限り空室を避ける対策をしなければ、区分マンションの強みである初期費用の安さや返済額の少なさを上回るリスクで損をする可能性もあるため、可能であれば区分マンションよりも一棟アパートを選ぶようにしましょう。
節税効果
不動産投資を行なう人の多くが安定した利益を狙っているわけではありません。もちろん、利益が出るのに越したことはありませんが、節税効果を期待して行なう人も多くいます。
節税効果という点は不動産投資の魅力の1つで、不動産投資を行なう動機になっている人も多くいますが、節税効果を期待するのであれば最もオススメなのはアパートになります。不動産投資で節税を行なう際、建物の減価償却費というものがあり、これは建物の耐久年数が関わってくるため、耐久年数が短い方が節税効果を得やすくなります。
耐久年数は構造によって異なりますが、それぞれの構造別で以下のような耐久年数になっています。
法定耐久年数 | |
構造種別 | 耐久年数 |
鉄骨鉄筋コンクリート(SRC造) 鉄筋コンクリート(RC造) |
47年 |
鉄骨造 | 34年 |
軽量鉄骨造 | 19年 |
木造 | 22年 |
上記を見ていくと、構造上アパート(木造・軽量鉄骨造)の方がマンション(重量鉄骨造・鉄筋コンクリート)よりも耐久年数が短く、節税効果を期待することができるとわかります。特に年収が高い人は不動産投資を節税を兼ねて行いたいという人が多く、アパート投資の方が節税効果を得られやすいためオススメです。
また、空室リスクを除けばアパートの方がマンションよりも利回りも高い傾向にあるのも利点なため、アパートで入居者が望めるような立地や近隣状況であれば、不動産投資の成功率は上がることになります。
経費
不動産を保有した場合には、保有期間中の運用コストも収益性に大きな影響を及ぼします。管理費や保険などもそうですが、税金なども含めれば少なくない金額が家賃収入から引かれるため考えておかなくてはいけません。マンションとアパートを比較した場合、アパートのほうが経費は安い傾向になります。
理由としては固定資産税や都市計画税、修繕費用といった費用が全体的にマンションのほうが高いためです。特にエレベーターなどの設備がある一棟マンションの場合、定期点検や修理のコストが発生するため、アパートに比べるとかなり変わってきます。
区分マンションの場合には、修繕費用などが発生しずらくなっていますが、月々の管理費用や修繕積立金が発生するため予め考えておかなければいけません。修繕積立金は基本的に10年〜20年といった歳月を経て大規模修繕工事に使われますが、毎月のコストとして必ず必要になることから、区分マンションの投資ではサラリーマンに人気でも家賃収益が残りづらい傾向にあるため注意しておきましょう。
まとめ
マンション経営とアパート経営に関して解説しましたが、これら2つにはそれぞれの強みや弱みがあり、これをやったほうが良いという正解はありません。ただ、やはり収入や目的によって不動産投資の動機は異なるため、目標や出口戦略を考えたうえで行わなければ、身の丈にあっていない物件を所有して失敗する可能性が高くなります。
そうならないためにもマンションとアパートのそれぞれのメリットやデメリットを理解し、どちらを経営すれば中長期で成功できるかと事前に計画を考えておきましょう。基本的には資金次第で理想としている不動産投資が行えないという人もいるかもしれませんが、欲を出してしまった結果長期的に損をするようなことになれば意味がありません。
資金計画に合わせてどちらの経営があなたに向いているのかを判断し、長期的に不動産投資で成功できるように行動していきましょう。
COMMENTS
コメントはまだありません。