投資が簡単にできるようになった昨今ですが、新型コロナウイルスの影響もあって初心者には運用が難しい状況が多く訪れています。ただ、どのような環境下でも安定的なリターンを得られるようにならなければ、今後起こりうる経済的問題で大きな損失が発生してしまう可能性が高くなります。
そのため、長期を前提とした分散投資や資産のポートフォリオを入念に考えておくことが大切です。しかし、資産運用の経験がない人がいきなり分散投資やポートフォリオを考えるといっても、難しく捉えてしまって中々運用を始められないという人もいると思います。
長期的な運用をしていれば資産を減らすリスクを軽減することはできますが、不況や新型コロナウイルスのような予測が難しい事態になってしまえば、一時的に損失が膨らんで不安に駆られる人も当然いるでしょう。
そこで、今回の記事では市場概況と運用資産の特徴を整理し、ポートフォリオと運用方針を初心者でも決められるように解説していきたいと思います。相場の急変や資産を大きく減らすリスクを軽減するためにも、金融商品を購入する前に事前に考えておけるようになりましょう。
資産運用の市場状況と利回り
資産運用するにあたって大切なのは、投資する金融商品の市場状況と利回りです。
これが分らなければ、運用を始めるタイミングや金額は最適なのか?目標金額達成までにどれぐらいの運用期間が必要になるのかを判断することができません。
運用方法は人によって異なると思いますが、基本的に以下の4つになるはずです。
- 銀行預金
- 株式運用
- 投資信託
- 国債
金融知識がない人からみれば、出来るだけリスクを下げて安全な運用をしたいと考えるはずですので、まずは資産運用における市場の状況と直近の利回り状況を見て行きたいと思います。
銀行預金 | 普通預金 0.001% | 定期預金 0.002% | 一部ネット銀行 定期預金 0.02% |
国債 | 10年物 0.029% | 個人国債金利の下限0.05% | 2020年12月2日現在 |
米国債 | 10年物 0.834% | 2020年11月30日 | |
日本株配当利回り | 東証1部 2.23% | 東証2部1.68% | 2020年11月現在 |
NY株 | 配当利回り約2.03% | 2020年11月現在 | |
J-REIT | 分配金 4.32% | 2020年11月現在 |
銀行預金も資産運用の1つになりますが、上記を見て分かるように利回りは0.001%〜0.02%と非常に低い状態になっています。これでは出金手数料などで利回りを超えてしまいますし、銀行が本格的な口座維持手数料を導入すれば逆に資産を減らしてしまうことにもなるでしょう。
日本人は世界的に貯金好きだといわれていますが、銀行預金(貯金)だけの資産運用では資産が増えないことが分かるはずです。また、国債は銀行預金よりも利回りは大きいものの、目標金額を決めて投資で達成するためには期間が足りないという人も多くいるはずです。
一方で、個人で取引する株式投資や投資信託の利回りは国内・国外も2%を超えており、株主優待や配当金なども合わせると期間が短くとも十分な資産増加を狙うことが可能です。
それでは株式市場の状況はどのようになっているのか、新型コロナウイルスで比較的変動が多かった2020年から見て行きたいと思います。
2020年初終値 | 2020年11月末終値 | 最高値 | 最安値 | |
日経平均 | 2万3,204円 | 2万6,433円 | 2万6,817円 | 1万6,552円 |
NYダウ | 2万8,868米ドル | 2万9,638米ドル | 3万46米ドル | 2万9,638米ドル |
約一年間で最高値と最安値ではかなり金額に差がありますので、初心者から見ると一時的に不安になる時期があるかもしれません。しかし、年間で最終的には日経平均もNYダウ平均でも年度始めの終値よりも高い価格をつけていることが分かります。
資産運用する際に考える金融商品の4つ見方
ここまで運用資産の市場と利回りをお伝えしましたが、株式市場が最も利回りと長期運用に適していることが分かりました。それでは次に、投資する対象のについても詳しく説明していきたいと思います。
国内外の株式へ投資する際には、REITや海外国債、国内国債と色々組み込まれた投資信託のように、株式市場だけではなくバランスよく資産を保有することが大切です。一昔まえの金融資産は、元本保証されるものも多くありましたが、現在では元本が保証されないリスク商品が圧倒的に多くなっています。
これからは、リスクを抑えつつもリターンを得る方法について明確にするためにも、それぞれの金融資産の特性を解説していきたいと思います。
株式
株式商品への投資は必ずリスクが付きまといます。もちろん、株式だけに限った話ではありませんが、リスクヘッジを考えながらも売買していくリスク軽減することが求められます。
リスクを軽減しながらもリスクヘッジするには、以下の3つやり方がオススメです。
- 銘柄を指標などで選択する:PER・PBA・配当利回りなど
- 分散運用:個別銘柄を分散保有・ETFで保有
- リスクヘッジ手法:先物・オプションなどの売買を活用
銘柄を指標で選択していくのは、安全性と将来性がポイントいなります。最近では環境や社会性への対応が必要な要素としてみられることが多くなっています。ただ、3つ目のリスクヘッジには売買経験や技術が必要になるので難しいようであれば行う必要はありません。
REIT
REITの中でもJ-REITは、投資家が各投資法人の保有する不動産物件を身近に確認することができ、先行きの可能性を個人としても見極めることが可能になっています。
また、投資法人への課税の有利さ(利益の90%の分配可能)は、REITの優位性はいうまでもありません。上場株と同じ手順で買うことができるうえ、REITファンドの場合にかかる手数料などが不要なことも大きな特徴の1つです。
海外国債
海外国債の代表は米国のドル建て国債になりますが、他にも通貨別だったり、発行者別、利払い別といった様々なものがあり多種多様となっています。
通貨別には「米ドル」「豪ドル」「ユーロ」などが中心になりますが、他にも世界中の通貨別債券がありますので、日本円だけの国債に囚われずに吟味してみましょう。
日本の国際の場合には利回りは低くなっていますが、海外の国債を中心として5%〜6%や10%を超えるものもあり、幅広い利回りの銘柄があることが魅力です。個人で購入や保有する場合には、馴染み深い通貨での国債や知名度の高い会社の社債が無難になっているので、利回りが高いといって信用度が低いものを選択するのは避けるようにしましょう。
ただ、海外の国債には為替のリスクが付き纏うので、為替変動の大きさで信用格付けを確認するのも大切です。
投資信託
投資信託は、株式やREIT、債券などを組み込んだ金融商品になっています。ただ、組み合わせの数も多く、2020年に国内で流通する公募投信は約6,000本もあるので初心者には選定が難しく感じることもあるはずです。
株式を含んだ投資信託も多いため、株式投資同様に基準価格上昇に伴う持ち高の高騰を狙う場合もあれば、毎月分配で給料感覚を求める人も多いはずです。最近ではリターンは少なくなるものの、リスクを下げたバランス型の安定資産形成が盛んになっています。
しかし、多くの日本人たちが株式アレルギーになる一因になるほど、日本の投資信託の運用成果は悪く、手数料が高いため元本割れが問題になった側面もあります。投資信託のメリットは少額からの積み立て運用はもちろん、海外国債や株式と言った国内以外へも運用も可能とすることです。
運用の手間がないのは投資家にとって嬉しいことですが、購入する投信によって元本割れしてしまう可能性もあるので、銘柄の選択・手数料などのデメリットも注意したうえで考えましょう。
インデックス投信(ファンド)・ETF(上場投資信託)
インデックスファンドは、市場の動きを表す指標(日経平均株価、Topics、東証REIT指数)と同じ動きをするように設計されたファンドになります。
そのため手数料も安く、金融商品を購入するのに迷った際にはオススメです。
そのうち上場されているのがETFになり、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の個別株式、日銀のETFの2つが日本の現在の株式市場に新型コロナ後にも大きな影響を与えていることもあり、ETFへの注目は強くなっています。
ETFも投資信託になりますが、手数料は最低限になっているので分散投資してリスクを軽減したい人には向いている金融商品になります。
資産運用に対する税金対策
金融資産での運用において税金対策が入ることになったのには、譲渡所得と配当、利子所得への20%の課税が大きくなっています。資産運用において税金の支払いは見過ごせないイベントの1つですが、運用時の税務対策はiDeCoやNISAに集約されるでしょう。
NISAは一般NISAで120万円、積み立てNISAで40万円と上限はありますが年間非課税になり、長期に渡ってお得に運用することができるので初心者の人は是非利用するべき制度です。
ただ、途中で現金化する予定の資金の場合は、iDeCoでなくつみたてNISAを選択しましょう。
年代別のリスク許容度のポートフォリオ
ポートフォリオという言葉を初めて聞いたという人もいるかもしれませんが、ポートフォリオを考えておくことはリスクの取り方とリターンを求め方を決める上では欠かせません。
ポートフォリオは資産構成のことを言いますが、簡単にいえは資産における家計簿と計画書のようなものです。
リスク資産とノーリスク資産の保有方法は年齢によって変化してきます。これは若いうちには時間が多くあり、投資額が少なくても大きな資産が築けるため若いうちには時間が多くあり投資額が少なくても大きな資産が築けるためです。
逆に40代や50代といった老後を意識する年齢では、若いうちほどリスクを取ることが難しく、時間が限られているため資産を大きく増やす難易度が高くなります。
個人の資産や考え方次第になりますが、年代が上がるにつれて10%ずつリスクとノーリスク資産を逆転させることがオススメです。
- 20代:リスク資産80%、ノーリスク資産20%
- 30代:リスク資産70%、ノーリスク資産30%
- 40代:リスク資産60%、ノーリスク資産40%
- 50代:リスク資産50%、ノーリスク資産50%
- 60代:リスク資産40%、ノーリスク資産60%
- 70代:リスク資産30%、ノーリスク資産70%
リスク資産をどのような比率で保有するかは収入や貯蓄額の多さ、目標とする資産額に影響してきますが、老後を意識する40代ではリスク資産は60%、ノーリスク資産が40%になるので、具体的な資産の配分比率の例は以下の通りになります。
- 国内株式・海外株式:30~40%
- 海外債券:10%
- J-REIT・海外REIT:10~20%
- 預金・国内債券:40%
ちなみに、投資信託については上記の資産が組み込まれるものもあるため、保有資産全体で決めたポートフォリオに合うように考えておきましょう。
運用に迷ったら誰に相談するか?
運用や将来のマネープランに迷った場合、多くの人は誰に相談するのか?
FP(ファイナンシャルプランナー)や銀行に相談するという人も多くいますが、金融広報中央員会(事務局日銀内)の2019年調査によると下表の通りになります。
金融知識・情報に関する情報相談先 | 入手先 | 入手希望先 |
金融機関(窓口、パンフレット類、広告、HP) | 43.4% | 30.8% |
家族・友人 | 21.7% | 7.5% |
金融の専門家(書籍、セミナー、HP、テレビ番 組等) | 15.4% | 20.5% |
特定の業界に属さない中立公正な団体 | 5.5% | 21.9% |
学校 | 0.3% | 2.1% |
よくわからない | 0.0% | 13.5% |
その他 | 13.7% | 3.8% |
合計 | 100.0% | 100.0% |
この調査によれば、全体の約4割が金融機関で2割が家族友人になっています。ただ、金融機関に相談すると、流行や人気といった言葉で手数料が高い商品を勧められることも多く注意が必要です。
特に銀行が販売している投資信託では、全ての商品で元本割れを起こしているという事実もありますので、信用出来ると購入のすべてを委ねないようにしましょう。顧客本位の基本から外れていると指摘も金融庁からされており、金融機関の営業担当の言葉は信用しないことが無難です。
日本の株や投資信託といったリスク商品への根強いアレルギーは、こういった金融機関の長年の行動が根本としてあります。
また、金融教育がない日本において、家族や友人に相談しても失敗することが多くなっているので気を付けておきましょう。資産運用は、金融商品への知識とともに危機を予知する感性や相場の勘や決断力もまた必要であり、自らをよく知って運用にあたることが大切です。
そのため、自身で最低限の判断や決定をできるようにしておくようにしてください。
資産運用成功のためのポイント
資産運用をすることが当たり前になりつつ昨今ですが、未だに日本人の多くは投資に対して消極的です。これは、長らく日本でお金の教育がなかったためです。
そのため、短期的に大きな資金での売買や無計画な運用を行うものが未だに多くおり、安定的なリターンを得ることが出来る人は少なく、投資で勝つのは難しいといった言葉が当たり前のように呟かれるようになっています。
投資で利益を上がることは簡単ではありませんが、あなたが思うように難しくもありませんので、ぜひ資産形成で安定的にリターンを得られるようになりましょう。
資産運用で利益を出すためには、当然ですが損失が発生する際のリスクをしっかりと受け入れ、リスクを抑える方法やリスクに応じた金融商品を購入することが求められます。また、リスクは年代に応じた目安がどうしても必要になるので、しっかりとポートフォリオを考えて自己の判断で運用できるようにしておくことが大切なポイントとなります。
FPやIFAの力を借りてもいいですが、中にはあまり対策ならない方法を勧められることも多いので、金融商品や経済の流れについて関心を持って情報収集することが重要です。相場は常に変動して一時的にですが大きく価格が下がることもありますが、焦らずに現状を受け入れて長期で運用しながら学んでいきましょう。
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