人生100年時代とは?長寿化で見えてくる老後の問題と必要な3つの力

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人生100年時代とは?長寿化で見えてくる老後の問題と必要な3つの力

日本は世界で最も長寿な国として有名です。厚生労働省の「簡易生命表(令和2年)」によれば、2020年時点で日本人の平均寿命は男性が81.64歳女性が87.74歳となっており、年々上昇しています。

 

これは医療の発達や衛生環境、そして栄養状態といった部分が昔と大きく改善され、医療制度も日本では充実していることが理由です。

 

日本における医療や健康的な内容は多くのひとが知ることではありますが、平均寿命が伸びていること加えて多くの人が長生きするということは、人生が80年、90年、100年続いていくのが当たり前になってくるということでもあります。冒頭でもお伝えしたように、日本人の平均寿命は男女ともに80年を超えていることもあり、近年いわれる人生100年時代という言葉は的を得ているでしょう。

 

ただ、多くの人が長生きすることで個人では解決できない問題も多く、国家プロジェクトや世界規模で取り組む社会問題の1つとして課題も多いのが現状です。

 

今回の記事では、何かと耳にすることが多い「人生100年時代」についてお伝えしながら、老後を見据えてどのように働き方や生き方を変えて備えればいいのかを解説していきたいと思います。あなたも例外ではなく長生きすることから、ぜひ人生設計や構想について今から考えてみてください。

 

人生100年時代の発祥は1冊の本

老後の生き方

「人生100年時代」とは、長生きする人類に対しての問題や課題といった部分への定義として捉えれることが多くなっており、元々はリンダ・グラットン教授が執筆した「LIFE SHIFT(ライフシフト)」と呼ばれる著書で提言されたものです。

 

この「LIFE SHIFT(ライフシフト)」で紹介された人生100年時代では、寿命が伸びていくにあたって国・組織・個人のライフコースの見直しが必要という内容を表す言葉として使われ、大きな反響が日本でもありました。そこでは個人の狭義だけではなく、国家も含めて改善の必要がある課題として社会に訴えたかけたことから、多くの国や個人が将来へのライフスタイルの見直しを考える事になったわけです。

日本の人生100年時代への政策

日本は世界的に長寿国家なこともあり、この人生100年時代へ対する政策の1つとして2017年9月に日本政府によって「人生100年時代構想会議」も開催されるようになっています。実際にWHO(世界保健機関)の発表した「ワールド・ヘルス・レポート2003」でも日本の平均余命は世界一で、女性85.3歳、男性78.4歳と長寿として報告されていることから、日本のみならず世界的にも日本が長寿国家であり、少子高齢化によって抱える問題の大きさから注目を集めています。

 

そこでこの「人生100年時代」という提言のもと、日本でも超高齢化社会からくる経済や社会の構造を今後どのように変えていくべきか、という構想を考え、親の経済事情に関係なく子供が学べる社会年齢関係なく新しいことを学べる社会といった社会構造の構築に取り組んでいます。

 

その中でも最たるものは教育への投資で、具体的には幼稚園や保育費用の無償化や自動待機問題への取り組みといった一度はニュースなどで耳にした事がある内容などです。

また、これからの社会での構造改革として以下の対策も積極的に取り組まれています。

  • 高等教育の無償化
  • 給付型奨学金の支給額増大
  • 幼児教育
  • リカレント教育
  • 大学改革
  • 高齢者雇用

これら改革の実現は難しいものの、少しずつ達成できるように取り組まれているため、もしかしたら今後子供への教育や生活に対する負担がさらに軽減できるかもしれません。

 

人生100年時代で必要な3つのライフプラン

人生100年時代

「人生100年時代」は、リンダ・グラットン教授の著書『LIFE SHIFT』を起因として大きく将来への問題が意識されるようになりましたが、この著書で引用されている研究では2007年に日本で生まれた子供が107歳まで生きる確率が50%もあるという事も伝えられています。

年々出生数の減少と反比例して高齢者が増えている日本では、将来年金や医療問題を含めて様々な社会問題があるとされています。仮に107歳まで生きる可能性が50%でなくとも、100歳を超える人が多くなるというのは平均寿命の伸びから現実的に考えられます。

 

事実、長期の病気を含めて不健康な期間を除いた健康寿命でも男性72.3歳、女性77.7歳で世界1位と分かっているため、よほどのことがない限りは伸びていく寿命の通りに生きる人が多くなるはずです。

 

そして私達が考えていかなければいけないのは、長生きをすることが当たり前の中でどのように生きていくかということです。

 

これは仕事や生活、将来の老後資金なども含めて考える必要があるものであり、欧米・アジア各国で退職後のセカンドライフへの意識調査を行っているオランダの保険会社グループ、エイゴンとソニーライフ・エイゴン生命のまとめによれば、調査対象の15カ国中、退職後の準備が最も整っていない国は日本だということが分かっています。

つまり、寿命が長く最も早くこの問題に直面する可能性が高い日本人が、世界的にみても準備ができていないという現状があるわけです。

 

ここで一度考えてもらいたいのですが、あなたは人生100年時代という言葉は聞いたことがあっても、それに対してなにか将来への対策を今から行っているでしょうか?

 

現状と将来の予測に対して最も危機意識が低いと日本はいえるかもしれませんが、この『LIFE SHIFT(ライフ・シフト) 』では人生100年時代に適応していくために考え方についても紹介されています。

 

次は、私達に訪れる人生100年時代に対してどのように考えて備えていくべきなのか、LIFE SHIFTで紹介されている人生の3つのステージを解説しながら「意識するべき生き方」をお伝えしたいと思います。

 

人生100年時代以前に歩んでいた従来の一生

私達の人生において、多くの人が義務教育を終えて進学していき、最終的には大学を卒業するまで知識を吸収していき、その後社会に出てからは会社で社会を学んでいきます。

これはおそらく多くの人が体験して実感できる常識の人生になりますが、基本的にその後続くのは老後まで現役世代として仕事を全うし、退職しては老後をゆっくりと過ごすといった一生です。

 

つまり、これまでの日本ではこの「教育を受ける→仕事をする→老後を過ごす」といった大まかに3つのステージに人生は区分されていました。

 

ある程度年齢に区切られている人生の3つのステージは、進めば進むほど後戻りができない一方通行です。ただ、人生100年時代では今までの生き方ではなく、大きく変える必要があります。

 

もしも「人生100年時代なんて他人事…」といつまでも無関心できれば、後々後悔する可能性もあります。米国の事例で算出しているので日本に当てはまるわけではありませんが、『LIFE SHIFT(ライフ・シフト) 』では18歳の人間が100歳まで生きると仮定して考え、今の働き方を中心として人生モデルに沿って65歳で引退を意識すれば、「勤労期間中に毎年収入の25%を貯金し続ける必要がある」ということも唱えています。

 

ちなみに、公的年金が減額された場合にはさらに必要となる貯蓄は増え、仮に公的年金が数十年後に全く受け取れなくなれば31%まで数値は跳ね上がります。

公的年金が全く受け取れなくなるということはないかもしれませんが、4割は年金保険料は支払っていないというデータもあり、今後日本の年金制度改革の議論が進めば今の人生モデルでは厳しくなるのはいうまでもありません。

 

もちろん、引退を先延ばしにするという考えもありますが、近年いわれている無人販売機やレジ、AIといった技術の進化を含め、今現在培っている知識やスキルが将来まで使えるとは限りません。

その点も考慮してうえで、私達は将来のことを考えて見つめ直す必要があることを意識しておかなければいけません。

人生100年時代で求められる3つのライフステージ

『LIFE SHIFT』では、何もそういった寿命の伸びや経済的な問題だけを発起しているのではありません。人生100年時代を迎えたうえで、変わっていく世の中にどのように対応していけばいいのかも解説されています。

それは長い人生を通して経験やキャリアを今まで通り過ごすのではなく、多層化させて柔軟に変化させる必要があると消化され、以下の3つのステージとして紹介されています。

 

エクスプローラー(探検者)

エクスプローラーと紹介されている時期では、自分の生き方や将来に対して考えるタイミングであり、知識やスキルを将来の人生設計を描きながえら改めて吸収して人脈を広げるライフステージです。年代でいえば吸収率が高く、人脈も広がりやすい20代から〜30代と考えられるでしょう。

 

日本では何回も転職する人に対して良いイメージがありませんが、米国などでは自分にあった仕事やスキル、収入が向上できるように積極的に学び、身につけた知識で転職を繰り返す人も少なくありません。

もちろん、日本とは社会構造も常識も違うため同じように考えることではありませんが、それでも出来ることが1つでも増えれば、それは新しい収入口となり得るものであり、そこで得た出会いというのは思わぬ幸運を自身にもたらすことがあります。

 

エクスプローラーとは文字通り冒険者のような生き方であり、まだ知らない環境で生きるための新しい知識や技能を得るだけでなく、人との関係を築く段階です。

 

LIFE SHIFTは、間もなく老後を迎える人や高齢者に向けたものではなく、将来さらに伸びる寿命を迎える若者へ向けた本でもあります。そのため、失敗しても取り返しやすい若い時期にこそ、多くを学んで将来へと繋げられる力を身に着けていくということです。

 

インディペンデント・プロデューサー(独立生産者)

このインディペンデント・プロデューサーでは起業家のようなイメージで、会社に依存せずに独立した立場で収入で得られるフリーランスのようなものです。ただ、何も本当にフリーランスとして働くのではなく、会社を辞めずとも今ある知識や新しく得たスキルを使って毎月1万でも2万円でも得られば、数十年で大きな資産に変わるのですから、大きく将来へ備えることもできます。

 

人によって異なりますが、それはプログラミングだったり広告、動画編集など人によって様々で時間もかかるでしょう。ただ、遅くとも毎月少しずつ自身のみで行える仕事ができれば、それはスキルや経験の向上から新しい人との繋がりや努力が実を結んで大きなものへと変わります。

また、これらをやりながら新しいことを学べば、違う職種や一見関係ないような人からの仕事も舞い込んでくることもあるはずで、このステージではエクスプローラーで得た知識や新しく学んだことを生かして独立した生産能力を発揮する段階となります。年齢でいえば結婚や将来に対して真剣に考え出す30代〜40代の現役世代と考えることができます。

 

ポートフォリオワーカー

最後のポートフォリオ・ワーカーは、先の2つのステージを含んだ様々な活動(仕事やボランティア、NPO活動)を同時期に取り組んでいくステージです。最後のステージなだけに間もなく訪れる老後へ準備を完了させるという解釈も可能でしょう。

ただ、各ステージは人次第で行う内容は順序もタイミングも異なります。

 

これらのステージは一度経験したら終わりということでもなく、老後でも活かすことができるため、今まで人生で学んだことを定年まで過ごす従来の人生ではなく、臨機応変に年代関係なく段階を戻すことができるのが人生100年時代を迎えたうえで 求められることになります。

 

そして、ここまでの3つのステージで得ていくのはお金のような有形資産だけではなく、スキルや知識、人間関係といった無形資産も積極的に育んでいくことが今までより大切になるという事でもあります。

この人生100年時代で変化する必要がある3つのステージには、寿命が長いということを前提でも「時間」を柔軟に使っていくことが求められますので、わずかな余暇時間の過ごしかた1つでもいいので自身のスキル向上などに考えてみましょう。

 

人生100年時代で求められるもの

ここまでの内容で人生100年時代を迎えた日本では、従来通りではなく新しい人生設計を必要になると「LIFE SHIFT」で紹介されていました。ただ、話をまとめると今後の日本での生活において何が必要とされるのか少し疑問が残る人もいるかと思います。

 

そこで、最後に人生100年時代において求められるものを分かりやすく解説してご紹介したいと思います。

その1.「教育」

教育という言葉を聞くと、まず思い浮かぶのは小学校や中学校における義務教育と、高等学校や大学といった教育機関です。ただ、長い人生で活躍し続けるうえでは、専門的な技能を高めつつ、新しいスキルを身につけることも必須になります。

単純に1つのことだけを身に着けたとしても意味がありません。そのため、誰も真似できないほど突飛した技術を身につけるか、他の分野で身につけた技術を併せ持って他の人と差別化することが重要です。

 

また、時には同じ技術を持つ者同士や他分野の人ともグループを組んで行ってもいいですし、1つの組織としてやっていくこともいいでしょう。ただ、1ついえることは「教育」という言葉に年齢は関係なく、自身の意欲や行動次第でスキルや技術に知識が発展していきますので、その得たものを自ら活かせるように行動にすることが人生100年時代だということです。

 

その2.「複業」

「副業」に比べると「複業」は見慣れない言葉になりますが、「複業」とは、複数の本業を持つことであり、副業のような片手間として仕事を行うのではなく、生業として別の業種を2つ以上兼務することになります。

 

この言葉自体が新しい言葉になりますので、厳密に定まった定義があるわけではありません。

ただ、近年では従事する時間に差はあれど全てが本業と考えている人が増えてきており、複数の企業に属したりしながら自身のスキルやキャリアを高めたり、新しい人脈を増やすといった目的を持って行う人も多く、本業並の収入ではなくとも別の目的から仕事を行う人が増えています。

 

社会に出て仕事を学んだあとも、新しい事を学んでスキルや技術を積極的に活かしつつ、そこで得た人との繋がりを作っていくことが「教育」のあとに必要な行動です。

 

人生100年時代では、そういった身につけたものを活かしながらも、時には「教育」と「複業」の2つのステージを行き来して人生設計に組み込んでいくこと求められるということです。

 

その.3「資産」

どんな年齢になっても資産があっても困ることはありません。ただ、資産は大まかに分類すれば「有形資産」と「無形資産」の2つに分けられます。

有形資産とは、お金などの金融資産や不動産といった実物資産であり、目に見える形の資産となります。これは資産形成を始める年代が早いほど時間を見方に長期運用できる特徴があります。この「有形資産」の重要性については今更説明しなくても多くの人がご存知でしょう。

 

そして、これからの人生100年時代でさらに価値が増すのが「無形資産」です。「無形資産」とは、築き上げてきたスキルや経験を含み、人脈や資格といったものが該当します。

これは健康や現物資産にも結びつく価値が決められないものですが、インターネットやSNSといった直接会わなくてもコミュニケーションや友人となれる環境から大きく人生を左右する資産となりました。

人生100年時代ではお金といった「有形資産」はもちろん、「無形資産」のような形にないものの、人生において重要な要素となるものは資産といえます。そして、この2つの資産を築いていくのが3つのライフステージでは肝となるため、具体的なことが分かりずらい将来の可能性を広げられるように早い段階で資産形成を考えておきましょう。

人生100年時代を見据えて

今回の記事では、何かとメディアでも取り上げられることが多い「人生100年時代」についてご紹介しました。

「人生100年時代」については、聞いたことはあっても知らない人も意外と多いため、政府も将来を見越した政策をしていることをご存じない人もいるでしょう。ただ、私達が生きる日本では、さらに寿命が伸びることが分かっています。

 

そのうえで、今抱えている年金や老後の問題は話題になることが多くなっていますが、これまでの人生と違って新しい時代と共に新しい人生を歩む必要もあるため、将来を見越したうえでは個人のみならず企業や社会に対する意識を変えていくことも重要となります。

 

「資産は必要だけど先の話だからいずれ..」と考える人もまだいるかもしれませんが、時代が進むにつれて日本の問題は増えていきつつ有るため、やはり今のうちから将来を見越した行動を行うのが、今までの人生でもこれからの「人生100年時代」でも必須であり、これは多くの人が理解できるはずです。

 

将来の人生を豊かにするためにも、ぜひ新しい3つのステージを取りれた行動をできるように人生を組み替えてみましょう。

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