年収別に見る厚生年金の受給額
国民年金の額が小さいというわけではありませんが、厚生年金の平均受給額は144,366円です。国民年金と比較すれば88,420円もの差額があるため、どうしても老後の生活は厚生年金の方を収入の柱として考えるひとが多くなるでしょう。
ただ、これは平均額であり、実際に自分はどれぐらい受給額があるのかというのは計算してみなければ分かりません。しかし、「ねんきんネット」や「ねんきん定期便」で確認しているひとを除けば、計算するのが手間だったり収入の変化も多い年代で複雑だと感じる人も多いでしょう。
そこで、ざっくりで良いので今の年収から毎月もらえる受給額を知りたいという人は、以下の早見表から年収ごとのおおよその厚生年金受給額を確認してみましょう。
年収 | 保険料納付期間 | ||||||
10年 | 15年 | 20年 | 25年 | 30年 | 35年 | 40年 | |
300万円 | 1.5万円 | 2.2万円 | 3.0万円 | 3.7万円 | 4.5万円 | 5.2万円 | 6.0万円 |
400万円 | 1.9万円 | 2.9万円 | 3.9万円 | 4.9万円 | 5.8万円 | 6.8万円 | 7.8万円 |
500万円 | 2.3万円 | 3.5万円 | 4.7万円 | 5.9万円 | 7.0万円 | 8.2万円 | 9.4万円 |
600万円 | 3.2万円 | 4.8万円 | 6.4万円 | 8.0万円 | 9.6万円 | 11.3万円 | 12.9万円 |
年収が高くなるに比例して納めている保険料も多くなるため、基本的には納付期間と収入に比例して厚生年金の受給額が高くなっていきます。上記の表はあくまで毎月もらえる厚生年金の受給額になりますが、これに国民年金が加わる形となります。
「2つを合わせても思ったより少ない…」と思った人もいるかもしれませんが、今後の物価上昇や住んでいる地域によってはさらに老後の生活が厳しくなる可能性も否定できず、老後の資金が2000万円が不足するという話題から危機感を抱いている人も少なくありません。
ただ、年代とともに昇進などから収入は増えていくものですので、今分かっている受給額よりも増えていく傾向にあります。もちろん、業種や仕事の内容によっても変わるため、早いうちに老後への資金対策も考えておく心がけが重要となります。
これはつまり、年金だけの生活だけでは貯金を切り崩しながら生活を維持するのが精一杯という可能性もあるわけで、ゆとりのあるセカンドライフを望む場合には、公的年金に加えて別の方法で資金を準備することも求められるようになっています。
そこで多くの人が考える選択肢に私的年金というものがあります。
私的年金とは公的年金の上乗せ給付を保障する制度で「国民年金基金」「確定拠出年金」「確定給付企業年金」などあり、加入は任意ですので将来が不安な人にはオススメです。
ここまでの内容では公的年金の受給額について解説しましたが、最後に私的年金についてもご紹介していきたいと思います。
将来の年金受給額から不安に感じるひとは参考に老後資金について考えてみましょう。
私的年金は公的年金に上乗せ給付する制度
私的年金は公的年金の上乗せの給付を保障する制度になり、簡単にいえば個人で積み立てていく年金のことです。この制度は老後の生活が年金生活だけで送るのに不安を抱く個人や企業が、自身のニーズに合わせて制度を選択することが可能であり、「国民年金基金」「確定拠出年金」「確定給付企業年金」などがあります。
簡単にいってしまえば政府が運用しているのではなく、民間の保険会社などが販売している個人年金保険が私的年金に該当します。
例えば自営業者の場合、厚生年金ではなく国民年金のみとなり、どうしても厚生年金に加入している会社員と比べると将来もらえる受給額に差が生じることになります。この事から自営業者などには上乗せを求める強い声があり、年金受給額の差を解消するために厚生年金に相当する国民年金制度が平成3年の5月に設立されています。
つまり、自営業者などでも企業に務めているサラリーマンと同じく「二階建て」が可能となり、こういったように個人で将来貰える年金を増やすために積み立てて年金を上乗せできるやり方が私的年金です。
そして、私的年金には「企業が自社の退職金制度に関する福利厚生の一環として実施する年金」と「個人が任意で加入する年金」があり、「確定給付型」と「確定拠出型」の2つ種類に別けられています。まずはこの2つについて解説を交えながら私的年金の種類についてご紹介していきたいと思います。
確定給付型
「確定給付型」とは、加入した期間などに基づいて将来の給付額が決められている年金制度になります。つまり、毎月一定額を地道に積み立てていくことで無理なく資金を作ることができるということです。「給付建て年金」とも呼ばれるこの制度は、それまで主流であった厚生年金や退職金などに代わって増加した企業年金制度でもあり、国民年金基金がこのタイプに該当します。
また、「確定給付企業年金(DB)」と呼ばれる企業年金として紹介されることも多くあり、個人年金保険にも「定額年金」という形の確定給付型の商品が存在しています。
確定拠出型
確定拠出型は、加入者が拠出した掛け金とその運用収益の合計額から給付額が決まる年金制度で、ある種投資に近い見方をするひともいます。給付額が決まっている確定給付型に比べて確定拠出型は加入する際に毎月いくら積み立てるのかを決めることになります。
そして、加入者の運用次第で積立金以上の給付額を得ることもあれば、逆に給付額がマイナスになるという事も考えられます。これは変額型の個人年金や確定拠出年金制度が該当します。この確定拠出年金制度に企業型と個人型があり、個人型はiDeCoと呼ばれているので聞いたことがあるというひとも多いかもしれません。
個人で使える私的年金種類と加入条件
私的年金とは公的年金と違って基本的には個人で積み立てていく年金ですので、収入的に将来へ備えるのが難しくないというひとはいいかもしれません。ただ、人生なにがあるかは分かりませんので、ある程度余裕があるタイミングや万が一の事を考えて老後の資金を作るという考え方は、恐らく私的年金という言葉に限らず誰も意識していることでしょう。
それでも老後の公的年金を柱として、私的年金などを活用することで将来の年金額を増やすことは誰でも可能なため、年金だけで不安という方は早い段階で利用していくのがオススメです。
私的年金は種類によって保険料や年金額が異なり、どこが運営しているかによっても色々と違う点がありますので、加入条件を含めてどのような私的年金があるのかをご紹介していきたいと思います。
①国民年金基金
国民年金基金は、自営業やフリーランスなどの厚生年金に加入できない第一被保険者が任意で加入することができる制度で、老齢年金の上乗せが可能となります。掛金は口数制となっており、受け取る年金額の給付型を自身で選択します。
給付に関しては1口目は終身年金タイプとされてはいるものの、2口目以降は確定年金のタイプも選ぶことが可能となっています。
掛金は全額所得控除の対象で所得税や住民税が軽減されますが、国民年金保険料を免除されているひとは加入ができないようになっているので注意しましょう。
②iDeCo(個人型確定拠出年金)
iDeCoは資産運用としても多くの人に知られているので、もしかしたら知っているひとも多いかもしれません。iDeCoは個人が任意加入で資金を支払、自身で運用方法を選びます。
原則60歳以降に受ける個人型確定拠出年金になります。
証券会社や銀行、保険会社などの多くの金融機関が取り扱っており、2017年以降は加入対象が公務員や企業年金に加入しているサラリーマン、専業主婦まで広がったこともあって多くの人に知られるようになりました。
また、一気に知られるようになった主な理由として、税制の優遇が受けられるというメリットがあり、運用中は運用益に対して非課税となり、受け取る際にも退職所得控除や公的年金等控除といった所得控除があります。しかし、受け取れる年金額が運用成績次第と言う部分や管理手数料の高さ、原則60歳までお金が引き出せないというデメリットがあるので注意しておきましょう。
③企業年金
企業年季は、従業員の退職後の生活保障として福利厚生の一環で企業が独自に導入する年金制度になります。ただ、この企業年金は企業ごとに内容が異なり、企業によっては採用していないところも多いので自身の勤務先に確認してみましょう。
基本的に確定給付企業や企業型確定拠出年金などがありますが、民間の金融機関へ運用を委託している形となります。
企業年金は退職年金とも呼ばれ、もともとは企業が一度にまとめて支払わずに済むことから、その分の利息に相当するお金をプラスして支払うことから始まった制度となります。
④個人年金保険
個人年金保険は民間の保険会社が取り扱っている年金商品となります。
公的年金や企業年金だけでは老後の資金に不安がある人も多く、将来の老後生活を充実させたいというひとが中心として事由に加入可能な私的な年金です。
保険料や毎月の一時金などを支払い続け、60歳など契約で事前に決めた年齢から年金を受給することができます。
受け取り期間も10年間や終身といった契約次第で自由に選ぶことができ、支払った個人年金保険料は要件を満たせばその年所得税が軽減される個人年金保険料控除の対象ともなっています。
私的年金の加入資格
ここまで紹介した年金は、公的年金や私的年金を合わせると約6種類ほどあります。そんな老後の生活を支えてくれる年金では、解説したように加入資格がそれぞれ異なります。
自身がどれに該当し、どの年金制度に加入できるのかを今一度確認しておきましょう。
国民年金 | 厚生年金 | 国民年金基金 | 企業年金 | iDeCo | 個人年金保険 | |
第1号被保険者 | ○ | × | ○ | × | ○ | ○ |
第2号被保険者 | ○ | ○ | × | ○ | ○ | ○ |
第3号被保険者 | ○ | × | × | × | ○ | ○ |
将来の生活基盤だからこそ「今」必要性を考える
今回の内容では、基本的な年金の内容と将来受け取ることができる年金受給額について詳しく解説しました。年金といえば、将来の生活の柱であり、老後を迎えた際に誰も貰うイメージを抱くと思います。
しかし、私達の人生には家族の加齢や障害、死亡などの要因で自立した生活を過ごすのは困難になるリスクは必ずあります。そのリスクを予測することができないからこそ、これらに備えるための仕組みが公的年金制度であり、社会全体で予め備えるための保証が完備されています。
ただ、それぞれの年金には加入条件や受給条件があり、たとえ満額受給できたといえど老後の生活に余裕があるかというのは疑問です。
それぞれの平均受給額にしても、国民年金は月額55,946円で厚生年金は144,366円となっており、これでは足りないという人もいれば、足りるもののもう少し老後資金にプラスして旅行や趣味を楽しみたい人もいるでしょう。
そこで将来に備えた公的年金だけではなく、個人で自由に加入が可能な私的年金の重要性も近年では非常に高まっていますが、実質私的年金は預けた資金がほとんど変わらないこともあり、資産運用へ積極的に資金を移す人も増えています。
まだ将来のことであり、老後までの時間に余裕がある今だからこそ、今一度将来の生活をイメージしてこの機会に年金以外の老後資金を作ってみては如何でしょうか。
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