金融庁から発表された「老後2000万円不足問題」の話題から個人型確定拠出年金、いわゆる「iDeCo」で資産形成を始める人が急増しています。
金融庁の確定拠出年金の施行状況では、平成30年の8月に100万人を超えた加入者が令和2年の11月には約180万人(1,784,586人)とわずか3年で80万人近く急増したことになります。
徐々に増えていたiDeCoの加入者ですが、老後2000万円問題を受けて大きく加入者が増加した形になります。iDeCoは公的年季に上乗せできる私的年金制度として資産運用の1つの手段となっていますが、掛け金が全額所得控除の対象になるなど、節税のメリットも多く注目されています。
しかし、これからiDeCoを始めようと検討している人は、iDeCoの良い部分だけではなく、iDeCoで発生する問題やデメリットも気を付けなくてはいけません。
人気急増中のiDeCoですが、初心者が見落としがちな落とし穴も多くあり、加入後に後悔する人も意外と多くいます。そこで、今回の記事では、人気が高まるiDeCoに潜む5つのデメリットを解説していきたいと思います。
iDeCoに加入するための「資格審査」がある
一見すぐに始められそうなiDeCoですが、iDeCoの加入者資格を得るためには「審査」があります。iDeCoを始めるためには、金融機関選び、選んだ金融機関から送られてくる申込書に必要事項を記入して返送します。
しかし、送った書類は金融機関から国民年金基金連合会に送付されるようになっており、加入者資格のための「審査」にかけられることになります。この「審査」は、意外と長く1ヶ月〜2ヶ月ほどの期間を要します。その「審査」が完了すれば、iDeCoを利用するために必要な専用のIDなどの情報を郵送されるようになっています。
ちなみに、iDeCoの申し込みで必要になる書類は公的年金の第1号被保険者(自営業)と、第2号被保険者(会社員や公務員)で異なるので注意しましょう。
第2号被保険者の場合は、「事業者登録申請書兼第2号加入者に係る事業主の証明書」の提出が必要になります。つまり、書類を会社の総務担当者などに記入・押印してもらう必要があるということです。
これは、サラリーマンの場合だと企業年金の有無次第で掛け金の上限額が違うため、適切な掛け金が運用されているのかを会社に証明して貰う必要があるというわけです。
「審査」の時間はもちろん、iDeCoには加入するために必要な届け出の義務も1つのハードルになる場合があるので覚えておきましょう。
小規模企業共済掛金控除に掛金額を記入する必要がある
iDeCoでは、運用期間中の掛け金が全額所得控除の対象になります。これはiDeCoのメリットとして紹介されることも多く、所得税や住民税といった負担を減らすことができます。しかし、節税効果を得られるこのメリットは、年末調整や確定申告で申告することで得られるメリットです。
会社員の場合だと、年末調整や確定申告とをする経験はほとんどありませんが、知らなければiDeCoを始めても損をすることになります。
自身で掛け金を積み立てている人であれば、年末調整の際に「小規模企業共済掛金控除」の欄に掛金額を記入する必要があることを覚えておきましょう。また、支払った掛け金額を証明するために、国民年金基金から届く「小規模企業共済等掛金払込証明書」も必要になるので、合わせて添付しましょう。
ただ、もしも給料から天引きでiDeCoの掛け金を支払っている場合には、税金に関する手続きは年末調整で行わず、毎月の給与から源泉徴収されているので、原則として年末調整で記入する必要はありません。
自営業の人に関しては、確定申告の際に必要事項の記載と証明書を提出することで、納めすぎた税金を取り戻すことも可能です。申告書の「小規模企業共済等掛金控除」の欄に掛け金の額を記載し、会社員の場合と同様に「小規模企業共済等掛金払込証明書」を提出するのを覚えておきましょう。
iDeCoの大きなメリットでもある節税効果は、申告忘れや知らないばかりになくなってしまう事もあり、始めたばかりの人に多い失敗です。本来は得られる恩恵になるので、うっかりで損をしないように気を付けるようにしてください。
iDeCo運用中は「手数料」がずっと発生する
年金と聞くと、多くの人が必ず貰えると安心してしまいます。iDeCoも個人型年金と呼ばれるぐらいですので、運用していれば大丈夫と安心感を持っている人が多くいます。
しかし、意外と知られていませんが、iDeCoにも元本割れの可能性はあります。
iDeCoでは原則として、運用商品として定期預金などの「元本確保型」と投資信託などの「元本変動型」のどちらかを選ぶ必要があります。資産が減ってしまうのを嫌な場合には「元本確保型のiDeCoが適していますが、こちらは毎月手数料が発生するので元本割れしてしまう可能性があります。
iDeCoでは、3つのタイミングで手数料が発生します。
- 新規加入タイミング
- 運用期間中
- 給付タイミング
新規加入時には、国民年金基金連合会に2829円と窓口となる金融機関によって0円〜1000円程度の手数料がかかります。また、給付時には、1回当たり440円の手数料が発生することを考えると、意外と手数料は安くありません。
また、iDeCoの運用中には、手数料がずっと発生し続けるため、収納手数料と事務手数料と呼ばれるもので一律2052円が年金で発生します。それに加えて金融機関によっては0円〜6000円の口座管理手数料がかかるので、手数料が非常に高いというデメリットがiDeCoにはあります。
ただ、ネット証券などを利用することで、口座管理手数料が無料になるケースもあり、店舗型であれば一定額以上の資産残高で運用期間中の手数料が無料になる場合もあるので、やり方次第で手数料を安く抑えることは可能です。
もちろん、ネット証券で口座管理手数料が無料になっても、運用期間中には手数料が発生しますので、年利0.02%で元本保証型の毎月5000円の掛け金だと、年間で12円しか運用益を得ることができませんので、iDeCoで運用することの意味自体がなくなります。
iDeCoでは多くの節税メリットがあるものの、手数料が高く元本割れの危険性もあり、運用資金や申し込みをする証券会社次第で逆に損をしてしまう場合もあるので注意しましょう。
原則60歳まで運用中の資産が引き出せない
iDeCoは老後資産を築くことを目的とした制度であり、その応援のために国が税制上の優遇を設けています。そのため、原則として途中で資産を換金して引き出すことができません。
iDeCoの最大のデメリットとして知っている人も多いと思いますが、iDeCoで運用してるお金が自由に換金できないのは、万が一のことを考えると不安に感じるはずです。
60歳まで積み立てたお金が引き出せないとなると、もしも急にまとまったお金が必要になった際には困ることになります。また、最近では厚生省の法改定によって65歳まで延長する方針を打ち出していますが、現在は原則60歳までしか積み立てることができません。
一時期や年金を60歳から受け取れるという人は、60歳までのiDeCoへの加入期間が10年以上に限られることになります。
60歳以前の加入期間によって受け取り開始時期は異なりますので、仮に60歳までで加入期間が10年未満8年以上であれば、61歳からの受け取りになります。どういう事かというと、60歳の前にiDeCoで運用を始めた場合、加入期間が10年未満であると60歳から受け取ることが原則できないということになるわけです。
長期間預けているお金が引き出せないのもそうですが、短期運用ではメリットが少なく、前途で説明したように手数料で逆に減らしてしまう可能性もあるので注意しましょう。
転職で「移換手続き」が必要になる場合がある
最後にお伝えするiDeCoの落とし穴は、「転職」する際に発生します。恐らく、多くの人は関係ないかもしれませんが、今後の人生がどのようになるかは誰にも分かりませんし、スキルや高い年収を求めて「転職」を考える人も少なからずいるはずです。
その「転職」のタイミングで既にiDeCoに加入して運用していた場合、移管手続きを行う可能性が発生します。企業型確定拠出年金(企業型DC)を導入している企業から転職して転職先に企業型DCがない場合は、個人型(iDeCo)への移換手続きをする必要があります。
そして、この移換手続きには「期限」が設けられているので注意する必要があります。
移管手続きの期間は、企業型DCの加入者資格を喪失した、つまり退職した翌日から6ヶ月以内と定められています。もしもそれを過ぎてしまうと、自動的に現金化されてしまうので注意しましょう。自動的に現金化されてしまえば、運用を行えなくなるので資産を増やすことができなくなります。
そして、管理手数料として年間624円が資産から差し引かれ続けるので、その移換手続きの期間を過ぎてしまって勝手に現金化される前に、金融機関から必要書類を取り寄せるようにしましょう。ただ、現金化されてしまったとしても新規で申し込みを行うのと同じように、金融機関からの書類の手続きを行うことで運用を再開することもできます。
iDeCoで運用する前に考えるべきこと
今回はiDeCoで意外と知られていない落とし穴を5つお伝えしました。特に投資経験のない初心者の人は、iDeCoのことを「個人で出来る簡易的な年金」といったイメージを持っている人も少なくありません。
そのため、iDeCo加入後に放置して知らず損をしてしまう人は意外と多くいます。
メリットとデメリットを含めてiDeCoは長期が前提の運用手段になりますので、運用期間や目標利益を定める一般的な投資とはやや趣向が異なります。まずは少額から無理のない程度に始め、負担がかからないように老後を意識して始めてみるのがオススメです。
また、iDeCoで少額でやりつつも、投資信託で自身の資産状況にあった種類を選んだり、ミニ株で少額運用できるLINE証券などで積極的に増やせる資産運用方を少額でも良いので挑戦してみるのもいいかもしれません。
まずは少しずつでもいいので、老後や将来に向けた資産形成を考えて実践できるように考えていきましょう。
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