多くの人が将来のために貯金を考えていると思いますが、「今の収入では難しい」「いずれ貯金できればいいや」と思っている人も多いのではないでしょうか。
事実として、年収が多いほうが貯金しやすいはずです。ただ、それは独身なのか既婚なのかによっても変わりますし、収入や生活スタイルによっても変わるでしょう。
そして、意外なことに年収が1000万円以上ある人でも貯蓄が全く無いという人も少なくありません。貯金はするには収入が大きければ有利になりますが、それでも家計に対する意識や将来に対する資産形成の違いが影響していることも大きな差になります。
今回の記事では、1000万円を貯金することができた人と貯金がゼロの人との違いについてを金融広報中央委員会の調査結果から見ていきたいと思います。
4人に1人は貯金ゼロの年収1000万円
例えばですが、年収1000万円と聞けば恐らく多くの人がお金を持っている「お金持ち」と判断するはずです。ただ、年収1000万円の手取りは約700万円ほどで、激務なことや職場の近さから家賃の高い都心に暮らしていることも多く、手取り約700万円では子供もいる既婚者にはかなり厳しいのが現実です。
日本では年収1000万円以下の割合が多くなっていますが、そんな人からみれば「年収がそれだけあるのに貯蓄するのが難しいのはなぜ?」と疑問に感じる人もいるでしょう。
ただ、意外にも年収が1000万円あって4人に1人は貯蓄がゼロだということが分かっています。
これは、金融広報中央委員が独り暮らしを対象に行った調査「家計の金融行動に関する世論調査[単身世帯調査]」で分かった内容です。この調査結果によれば、貯蓄ゼロの人は36.2%で1000万円以上の貯金がある人は15.8%となっています。
貯蓄がゼロの人が多く感じますが、これについては年収が300万円〜1000万円それぞれの貯蓄状況から実際に貯められている人がいるのかを見ていきたいと思います。
年収300万円未満の独り暮らしの貯金額
年収300万円未満の場合、一人暮らしでは貯金がゼロの人の割合が約4割(39%)と分かっています。そして、逆に年収が1000万円以上ある人は11.1%と1割ほど。
年収が300万円未満であれば、住んでいる場所や付き合いによっても変わると思いますが、貯蓄ゼロが約4割が高いことが分かります。ただ、一方で貯金が1000万円以上ある人は1割いるということは、少なからず年収が高くなくとも一財産ぐらいのお金を貯めることは可能だということでもあります。
年収300〜500万円未満の独り暮らし貯金額
年収300万円〜500万円未満は、日本における平均年収でもあると国税庁の調査結果で分かっています。恐らく多くの人がこの年収に該当するのではないかと思いますが、年収が300万円以上で500万円未満の人は貯金ゼロが約3割(27.0%)になり、やはり年収300万円未満と比べると下がります。
そして、貯金が1000万円以上の人は17.6%と5%ほど増えた形です。このように見てみると、やはり年収は多い方が貯蓄がやりやすいことが分かります。
年収500万円〜750万円未満の独り暮らしの貯金額
年収が500万円以上で750万円での貯金ゼロの人の割合は18.1%となり、さらに先程の年収500万円未満よりも貯金ゼロの割合が減ったのが分かります。また、貯金が1000万円以上ある人は34.3%と、年収が増えると貯金額も増えるという傾向が明確にもなったはずです。
それでは、年収1000万円の人はどうでしょうか。
次は年収1000万円の独り暮らしを見ていきます。
年収1000万円以上の独り暮らしの貯金額
年収が1000万円以上というのは簡単ではありませんが、手取りで考えると700万円〜780万円になるので月収で約58万〜65万円を使える形になります。
しかし、年収が1000万円以上の人の場合には貯金ゼロの割合が24.1%と逆に増えている結果が分かっています。ただ、そのぶん貯金が1000万円以上の人の割合は60.3%と大きく増えているので、年収の大きさが貯金の大きさに比例するというのは確かでしょう。
ただ、ここまでの年収と貯金額を見てみると、年収が低くとも貯金できるものの、貯蓄できない人も増えるという結果で疑問が残った人も多いはずです。
貯金額が年収の多さに比例するだけではなく、別の要因も大きな影響を与えているというのが考えられますが、次はその要因を見ていき、上手に資産を増やしていけるようになったもらえたらと思います。
お金を貯まらない原因はなに?
ここまでの内容で年収が多い方が貯蓄はやりやすいというのが分かりましたが、それと同時に年収が1000万円以上と高くても貯金ができていない人も2割ほどおり、逆に年収が300万円未満と低くとも1割ほどは1000万円以上貯金できているという疑問も残りました。
この要因を紐解くことでお金を上手に貯金するための秘訣が分かるはずです。
それでは、その要因とは何なのか?その要因を紐解くためにまずは「家計の金融行動に関する世論調査[単身世帯調査]」(2020年)で、この人達の過去における1年間の家計運営の評価を見ていきたいと思います。
1年間の家計運営における自己評価
ここであなたにも考えてもらいたいのですが、今年、あるいは去年において家計の運営に余裕を持てていたでしょうか?
家賃やローンの返済、食費や光熱費に娯楽費と、人によって消費するお金の量は変わりますが、実際に「家計の金融行動に関する世論調査[単身世帯調査]」(2020年)では以下のようになっています。
- 思ったよりもゆとりのある家計運用ができた・・・7.2%
- 思ったとおりの家計運用ができた・・・21.8%
- 思ったよりも家計運営が大変だった・・・31.4%
- 家計運営については意識したことがない・・・39.7%
4つの項目で見てみると、1年間で余裕を持って家計畝位ができた人は7.2%と1割にも満たない少数派です。そして、想像通りの家計運営ができた人は21.8%と約2割になります。
逆に家計運営が想像よりも苦労したと回答した人は31.4%と多いことが分かります。ただ、家計運営について意識したことがない人は39.7%と約4割にのぼり、あまり支出に無頓着な人が多いことも分かります。
そして、この4つの項目の中で「意識したことない人」が最も多い4割になることを考慮すれば、お金を上手に貯めるための秘訣は家計における運営に関係していると紐付けることができるはずです。
貯金1000万円以上の人び家計運営の傾向
効率よく貯金していくためには家計運営が重要だと分かりました。ただ、お金を最も上手に増やしている貯金1000万円以上の人は家計における運営をどのように考えているのでしょうか。
家計運営は「予算を考えて支出をし、将来の予測を立てつつ資産の準備を進めることが大切になります。
それでは、貯金がない人と1000万円以上ある人は、平均と比べてどのぐらい家計運営を意識しているのか。次はその点を詳しく見ていきたいと思います。
貯金ゼロの人の家計運営状況
- ゆとりある家計運営ができた・・・2.2%
- 思ったとおりの家計運営ができた・・・9.6%
- 思ったよりも家計運営が苦しかった・・・31.9%
- 家計運営を意識したことがない・・・56.3%
貯金がない人は、4つの項目で見ていくと半数以上が「家計運営を意識していない」ことが分かります。つまり、入った収入に対して余ったら貯金をしているような状況で、得に将来を見据えて資金を準備したり備えた行動をしないことが分かります。
貯金が1000万円以上ある人の家計運営状況
- ゆとりある家計運営ができた・・・15.5%
- 思ったとおりの家計運営ができた・・・41.4%
- 思ったよりも家計運営が苦しかった・・・18.5%
- 家計運営を意識したことがない・・・24.6%
貯金がない人は家計運営が想像よりも苦しかったという回答が多いのに対し、1000万円以上の貯金がある人は「思ったとおりの家計運営ができた」と答えた人が最も多く41.4%になります。
約4割が予定通りの家計運営をできていた形ですが、「家計運営を意識したことがない人」以外は予め家計運営について考えていたことになります。
事前に家計運営を考えていた人で貯金がない人は約4割なのに対し、貯金が1000万円以上ある人は約7割と1.7倍と差があることを考慮すれば、お金を貯める秘訣は「家計における計画性」と考えられます。
約5倍考えている1000万円以上貯金がある人の目標達成率
ここまでの内容で注目したいのが、年収に貯金のやりやすさは比例するものの、家計における計画性を考えている人は貯金が上手に出来ているということです。そして、大切なのが計画通りに家計運営出来た人と余裕を持った家計運営ができた人の回答であり、その目標に対して達成率です。
貯金がない人では11.8%になりますが、貯金が1000万円以上ある人の場合には56.9%と4.8倍(約5倍)もの差があります。
思ったとおりの家計運営が出来たということは、事前に支出の計画を考えて見込み通りの実行できたということです。全体の平均で思ったような家計運営ができた人は約2割になりますので、貯金が1000万円以上ある人は家計における計画性と実行能力がしっかりとしていたことが明確に分かります。
そして、逆に貯金がない人は家計運営が上手くいかず、そもそも考えていなかったことが分かるはずです。
お金を貯める気はない?無計画では貯蓄は難しい
それでは、最後に家計運営の基礎になる生活設計を考えている人はどれぐらいいるのかを見ていきたいと思います。
【貯蓄ゼロの人】
1. 生活設計を考えている。・・・・・ 15.5%
2. 現在生活設計を考えていないが、今後は考えるつもり。・・・・・37.6%
3. 現在生活設計を考えていないし、今後も考えるつもりはない。・・・・・46.9%
【貯蓄1000万円以上の人】
1. 生活設計を考えている。・・・・・ 55.3%
2. 現在生活設計を考えていないが、今後は考えるつもり。・・・・・31.0%
3. 現在生活設計を考えていないし、今後も考えるつもりはない。・・・・・13.7%
貯金がない人は生活設計を考えている人が15.5%と少数派であることが分かりますが、逆に1000万円以上貯金がある人は55.5%と半数以上を占めています。
生活設計を考えず今後も考えるつもりがない人は、いわゆる行き当たりばったりな支出になるので、貯金が難しいということでしょう。そして、お金を貯めるには「貯金する意思」がなければ難しいのは当然です。
計画せずに貯められるほど収入があれば別ですが、恐らくほとんどの人が老後や子供教育費など、将来を見据えて少しでも貯蓄したいと考えているはずです。そのためにも、貯金を上手に行うためにも家計運営を大切に生活設計を考えるようにしましょう。
必要な貯蓄は長期で考えるのが重要であり、そして資産形成として時間をかけて運用も行っていけば、さらにお金が貯まるだけではなく増えてもいくはずです。1ヶ月や1年という短期で目標を考えるのもいいですし、見直しを含めて支出のバランスを計画して実行できるようにしましょう。
そして、上手に貯蓄するためにも、将来どのような暮らしをしたいかを考えてモチベーションも高めるのも長続きするためには大切です。今回の記事をきっかけに、あなた自身の支出や生活設計を見直してぜひ上手にお金を増やしていきましょう。
Comment On Facebook