「複利」を10歳で学ぶ米国とお金に消極的な日本との金融教育の差

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「複利」を10歳で学ぶ米国とお金に消極的な日本との金融教育の差

金融庁により発表された老後資金2000万円問題や新型コロナウイルスによる不況によって、お金について危機感を持つようになった人も多いと思います。ただ、日本でお金について体系的に学んだ事がある人は少なく、おそらく多くの人が投資に対して消極的で腰が引けてしまったり、怪しい話に乗ってしまった、というのが投資経験のない初心者にはあります。

 

これは「お金の教育」が不足していることが原因にありますが、あなたはお金の教育や考えというとどのようなものが思い浮かべるでしょうか。単純に収入を増やすという考えなら、多くの人がアルバイトなどの副業をイメージする人もいるはずです。

そして、将来の未来設計に不安があり、危機感があるものの何も行動出来ていないという人は、お金に対する知識が不足している可能性があります。

 

このお金に関する知識は、「金融リテラシー」といった呼び方をすることが一般的ですが、あなたは今まで生きてきたなかでどの程度金融リテラシーが培われているでしょうか。日本ではお金に関する勉強、つまり金融リテラシーを育む環境というのがほとんどありません。

ただ、海外ではこういったお金に関する教育が行わなわれているのをご存知でしょうか。

 

今回の記事では、お金に関する悩みはあっても行動出来ない人も多い昨今、日本と海外ではどのようなお金の教育の違いがあるのかをお伝えしていきます。

 

高校で金融リテラシーを学ぶ米国

お金の教育

「お金の知識」のことを金融リテラシーと呼べば、なにか難しいようなイメージを抱いてしまう人も少なくありません。しかし、そのような食わず嫌いのような状態では、将来苦労する可能性もあります。

 

また、金融リテラシーといってもそこまで難しいことはなく、アメリカなどでは高校の教育で取り入れられています。

アメリカは実学を重視することで知られていますが、お金に知識についても子供のころからすぐに使える知識を中心に教育を始めます。例えば、小切手で支払う文化があるアメリカでは、小切手の切り方の実習などが例に挙がります。

 

今では少なくなりましたが、通信販売の決算に小切手を郵送することもあり、店頭での買い物でも多く小切手が使用されていました。そのため、授業では、小切手に金額を記載する際には「$10」と記入するのではなく、「Ten dollars」と文字を書くように教育したりします。

これは、受け取った人が数字を書き換えて数字を偽装するのを防ぐためです。

 

この支払いや決算という部分で日本の教育に置き換えると、キャッシュレス決算が普及し始めていることを背景に、電子マネーでの支払いやクレジットカード払いでの注意点などをお金の教育として指導するでしょう。

 

金融リテラシーは単純にお金を増やすための知識ではなくお金の支出管理や運用に関する知識など全般を取扱います。これは社会に出てお金を手にすることで自然に身に付くことも多くありますが、注意点や活用方法といった知識がある人がお金を扱えば、やはり知識がない人よりも上手にお金を使うことが出来るのは必然です。

 

さらにアメリカでは、2018年のCEE(経済教育協議会)の調査で、個人のお金の管理について教える「パーソナルファイナンス」を高校で必修とする州が18年で7から17に増えています。それだけ多くの州でお金の教育が重要だと判断されているからだと分かりますが、まだ全米の半分にも満たないため、今後さらに増えていきながらも推進していく流れになるはずです。

 

アメリカの金融教育の内容

アメリカの民間団体である「JumpStart」は、幼児期から高校卒業までに身につけるべきお金の知識を『教育基準(ナショナルスタンダード)』と呼んでまとめています。そして、アメリカでは多くの学校がこれを採用して子どもたちが学んでいます。

日本では金融教育がありませんでしたので、内容が気になる人もいると思いますが、基本的にナショナルスタンダートでは、金融リテラシーとして以下の6つの領域に分けて考えられています。

  1. 支出と貯蓄
  2. クレジットと負債
  3. 勤労と所得
  4. 投資
  5. リスクと保険
  6. 金融上の意思決定

この6つの分類を見ていくと一見難しそうと思うかもしれません。しかし、「投資」の分野では、高校卒業までに資産を築いて目標達成するにはどうすればいいのかを説明できることが1つのゴールとされており。これを10歳相相当の年齢で学び始めますので、日本とアメリカでお金に関する知識に差が出るのも当然でしょう。

 

また、「投資をする理由を説明する」「単利で得られる利益を計算」「複利で得られる利益を計算」「単利よりも複利の方がリターンが大きく、有利である理由を説明する」といった内容を学ぶとされており、日本でいう小学校4年生の子供が複利計算を行っていることになります。

複利計算は難しくありませんが、日本では社会で出て働いている大人でも「複利」のことを知らない人も少なくありません。

 

そして、昨今お金の話題が雑誌やニュースサイトなどのメディアで取り上げられることが多い「若いうちから投資を始めるほうが有利」という内容を、アメリカの授業では18歳の時点で学び、学ぶ項目で「投資を遅らせた時の退職後の結果と早くから投資したときの利得を比較する」というもの既にあります。

未成年のうちに投資の重要性を理解させているのが分かりますが、確定拠出年金を多くの企業が導入していることを配慮すれば、日本でも高校生という年齢でも学ばせることは将来役に立つかもしれません。

 

北欧の金融教育

金融教育

北欧諸国の教育では、自立して生きるという点に趣がおかれています。

幼児期にはものづくりやお金の扱い方、小学校では起業家精神を教える流れになり、手作りの商品を制作後に店舗を開いて実際に販売を学ぶと言ったやり方です。子供では不可能なことも多いですが、それを大人が教育としてできるように教えることで、幼いうちから社会やお金の動き方を学ぶことができます。

これはお金の教育でもありますが、キャリア教育と呼べる側面があり、学校を卒業したあとも生活の基盤を自ら作れるようにしていくための教育方針になっています。

 

アメリカとはやや方向性は異なりますが、社会に出た後に役立つことは間違いありません。日本では大学生が運営方針や商品がない状態から取り敢えず会社を始めたり、「社長になりたいから」といった理由で起業する学生も多くいますが、やはり社会というものを知り、お金の流れをしっかりと理解しておかねければ会社経営は難しくなります。

 

その基盤を北欧では子供のうちから学べるのですから、大きな差が大人になった時点で生まれるでしょう。

また、北欧では、消費者教育にも力を入れています。デンマークやエストニアを含めた北欧近隣諸国では、1990年代から消費者教育ガイドラインを作成して推進しており、国民が消費者として市場で主体的に選択できることを目標としています。

日本で消費者相談といえば、商品やサービスの購入に関するトラブルを相談するイメージがある人も多いと思いますが、北欧などでは家計に関する相談や債務相談といった実情になっており、商品による詐欺やトラブルの相談は少なくなっています。

 

一般的な家計相談に乗るのは消費者相談室の正規の業務になっており、本気で国民の家計管理能力を向上させようとしているのが分かります。

 

日本の金融教育の現状

日本の金融教育

日本のお金の教育、つまり金融教育はどの程度学べるのかは、今の大人には分からないと思います。ただ、2005年が金融教育元年と言われていたのをご存知でしょうか?

当時は「銀行は潰れたない」「銀行にお金を預けておけば安心」といった神話を信じていた人が多く、おそらく今でもその言葉を信じている人は日本に多いと思います。ただ、2005年にお金の知識を身に付けてもらうべく、政府はマネー教育を広めようとする活動を開始しています。

 

その裏には、バブル経済のように国民が積極的に株式へお金を投資し、市場を活発させたいという狙いがあったのかもしれません。しかし、2016年に始めて実施された金融リテラシーの調査では、日本人のお金の理解度は依然として低いことが分かっています。

 

特に家計管理の分野とクレジットカードに関する正誤問題の正解率は5割を割り込む結果であり、投資の分野に関して言えば4割ほどです。

つまり、「お金を使う、使わない」「クレジットで払ったほうがいい」「投資銘柄を売却したほうがいい」といった、お金に絡む様々な選択肢でいえば、2回に1回は間違った選択をしてしまう人が今の日本の現状です。

 

ただ、過去の記事で日本でも金融教育が義務教育に加わることを紹介したように、日本の家庭科で金融教育を指導するように今後はなっていきます。その内容を見ていくと、小学生や中学生といった子供がこんなレベルの高い内容を学ぶのかと驚くのかもしれません。

しかし、米国や北欧などではそれが当たり前であり、日本でも導入が始まりつつあります。

 

既に社会に出ているサラリーマンやOLの人たちには、この金融教育を学ぶ機会というのがありませんでしたので、自身で学ぶ必要がありますが、日本でも金融教育が取り入れられる昨今、息子や娘が生まれて親になったときに、子どもたちよりもお金の知識が不足している大人も多くなるはずです。

 

「人生100年時代」といわれる今の日本では、個々にお金の教養を身に着け、資産運用やお金に関する管理を徹底できるようにマネーリテラシーを向上させる必要があるかもしれないということを理解しておきましょう。

 

おまけ「海外では学生に身に付ける複利」

米国では、学生似うちに「複利」に関する計算や活用方法を考える授業を受けます。この「複利」は資産運用といった投資の世界だけではなく、金融業界においても基礎中の基礎になりますが、私達一般人でも知っておくべき言葉です。

 

ここで質問ですが、あなたは「複利」を理解しているでしょうか。

 

この「複利」と似た言葉に「単利」がありますが、これを聞いことがある人は多いはずです。しかし「複利」に関しては、意外と日本では知らないという人も多くいます。

「複利」とは、預けたお金に対して発生した利息や利益をそのまま運用していくことで、お金を雪だるま式に増やすことができるので資産運用においては最も重要なやり方です。

 

実際に複利を使って10年や20年という長期間運用した場合の資産シュミュレーションを見てみると分かりますが、単利と比べると大きな差が発生し、長い年月をかけることで膨大な資産が築けることが分かります。

 

これを米国では小中学生が理解して具体的にシュミレーションしているのですから驚きですが、老後2000万円不足や人生100年時代といった言葉から、老後資金や将来のために資産形成を考えている人は、ぜひ理解しておいて方がいい内容になっているので、ぜひこの機会に読んで学んでみましょう。

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