不動産を所有している人は入居者に場所を提供して家賃収入を得ていますが、アパートやマンション、あるいはテナントビルといった賃貸物件を所有していれば、貸主側の都合で入居者の退去を求めるケースがあります。
ただ、入居者が契約する前には事前に説明や気にしていなかった要因、不動産の致命的な欠陥から予期せぬ問題で貸主も計画にない立ち退きを入居者に求めたくなる場合というのはあります。しかし、入居者は簡単に立ち退きに同意してくれないことも少なくなく、立ち退き交渉が決裂してしまってトラブルの火種になることもあるため注意が必要です。
そんなトラブルを回避するために貸主が借主に対して立ち退き料を支払うのが一般的になっていますが、立ち退き料をどれぐらい支払う必要があるのかご存知でしょうか?
今回の記事では、入居者に立ち退きを要求する事になった場合の立ち退き料が発生するケースと相場、そして立ち退き料を安くするためのポイントについて解説していきたいと思います。
賃貸物件における立ち退き料とは?
立ち退き料とは、賃貸物件においてオーナー側の都合で入居者に退去を求める際に発生する入居者の損害を補償するために支払われる費用になります。
これは、立ち退きの際に転移先の費用や家具の移動といった引越し費用が発生するため、貸主側の一方的な事情で退去を求めるケースでは費用を貸主が負担するというわけです。ただ、立ち退き料については法律的に定まっているわけではなく、必ず貸主が支払わなくてはいけないというわけではありません。
立ち退き料の内容と流れ
先程も説明したように、立ち退きを要求する場合には引越し代などの費用を入居者に負担を強いることになります。そのため、一般的に大家側がその費用を負担する形になりますが、その立ち退き料は以下のような内容となります。
- 業者に依頼する引っ越し代
- 転移先で発生する敷金や礼金
- 不動産会社の仲介手数料
また、上記以外にもインターネット回線の転移費用も発生する場合がありますが、自身の保有する物件の賃料帯へ引っ越しであれば、入居者に支払ってもらっていた賃料4ヶ月分以上に相当する立ち退き料が発生すると予測できます。
もちろん、前途で説明したように必ず立ち退き料を支払うというわけではなく、義務もありませんが、一般的にどのような流れで立ち退きが発生するかといえば、基本的に3つの段階を踏むことになります。
- 契約期間満了の6ヶ月前までに借家人へ解約の申し入れ
- 立ち退き料の交渉
- 立ち退き
解約の申し入れについては書類と個別面談で伝え、立ち退き説明をすれば入居者とのすれ違いも少ないでしょう。また、最初段階、例えば物件の契約期間が2年間ずつでの更新であれば、更新のタイミングで交渉することで立ち退き料を支払わずに済む場合もあるため、早い段階で伝えておくようにしましょう。
立ち退き料を支払わなくてはいけない根本的な理由
ここまでの内容でオーナー側の都合によって入居者へ退去をお願いする場合には、立ち退き料を支払うのが一般的だとお伝えしましたが、中には「こちらの都合であっても物件の所有者だから当然の権利では?」と感じる人もいるかもしれません。
実際、立ち退き料は法律で規定されているものではないため、絶対支払う必要があるわけではない事からそう思う人は少なからずいるでしょう。
しかし、そうなってしまえば退去に納得してもらえず余計な問題が発生してしまう可能性もあり、一定の立ち退き料を支払う方が有効だとオーナー側から判断されている側面もあります。これは交渉が難航して裁判になってしまえば、立ち退き料だけではなく時間とお金がさらに増すことにもなりかねないためです。
また、日本では海外の不動産業界に比べて貸主側よりも借主側の方が強く保護されており、不動産所有者側から賃貸借契約の解約の申し入れや更新を拒絶する場合には、入居者に退去を求める正当な理由が必要とされています。
ここでいう正当な理由とは、貸主が入居者を退去させるに値する正当な理由であり、大まかに2つの要因から判断されます。
主な要因「賃貸人と賃借人の物件に対する必要性」
所有している物件がオーナーのものであることは事実ですが、その建物に対する「必要性」というのは両方が抱えている問題です。例えば、貸主であるオーナー側の方が所有している建物の使用をより必要としている事情があると判断されれば正当な理由として成立するでしょう。
ただ、これは建物の老朽化がひどかったり、大規模な修繕や建て替えが必要となっている場合などです。こういった場合では解約を貸主側から申し入れる正当な理由として判断されるケースがありますが、やはり住居となっている賃借人をいきなり外に放り出すような真似は難しいため、正当な理由がなければ急に退去をお願いすることは難しく、賃借人側が有利となります。
比較が難しい場合に考慮される4つの要素
先程説明した2つの要素はお互いの主張もありますが、基本的には賃借人側が有利になります。ただ、正当な理由を含めて判断が難しい場合には4つの要素をもって判断されます。
- 長期間の家賃滞納といった債務不履行
- 貸主の建物利用における違反使用
- 建物の老朽化や大規模修繕などの必要性
- 立ち退き料の提供
これらの要因はあくまで副次的な要因であり、正当な理由としては弱いものの、立ち退き料の支払いを加えることで正当な理由として認められるものがあります。ただ、単純に立ち退き料を支払うだけで認められるわけではないので注意しておきましょう。これは、貸主の一方的な都合でもお金さえ渡せば退去してもらえるわけではないということです。
そのため、立ち退き料を含めて交渉していくことが不動産所有者として必要になり、現実的に立ち退き料が一切不要とされるケースは少ないため、正当な理由の程度によって立ち退き料を調整して支払うことになります。これが法律で規定されていない立ち退き料が通例として支払わなくてはいけない理由ともいえます。
立ち退き料が支払われる事例
必ず支払う必要はない費用でもありますが、万が一そのケースに遭遇した場合には支払う可能性も発生します。そうなった場合、貸主側の事情で退去を求めれば支払うことが多くなっていますが、実際にどのようにケースで立ち退き料が発生するのでしょうか。
次は実際に立ち退き料が発生するケースについてご紹介したと思います。
大規模修繕・解体・建替えなどの建物維持
入居者が安全に住める環境を整えるのは不動産オーナーとしての義務ですが、それが果たせない状況になる建物の老朽化は退去をお願いするに十分な理由です。老朽化した建物を建て替えたりといった大規模工事が必要になれば、老朽化に伴って耐震性を補うための修繕や建て替え工事は必ず必要になります。
老朽化の状態が酷く、危険性や緊急性が高い場合を除けば、正当な理由の一部として立ち退き料を支払うのが一般的なケースとなっています。
賃貸物件の所有者が住むケース
投資用物件ではなく、仕事などの関係で長期不在が続き、空いた状態の物件を貸し出すというのは戸建て物件には珍しくありません。例えば物件の所有者が転勤中にその物件を貸し、転勤から戻った際には自分で住むために入居者に退去を求めるケースです。
こういった場合、単純に自身ではなく親族を住まわせるといった場合もありますが、貸主側の都合ということもあり立ち退き料を支払うのが一般的となっています。
立ち退き料を支払わなくてもいい事例
立ち退き料の支払いに関しては入居者側の方が日本では強く守られていますが、それでも貸主側が必ずしも立ち退き料を仕払なくても良いのは、例外的なケースもあるためです。
それは貸借人の契約違反や定期契約といった契約内容に大きく関係しています。
①入居者に契約違反がある
物件に住んでいる入居者に契約違反がある場合には、不動産のオーナーは立ち退き料を仕払うことなく貸借契約解除することが可能となっており、物件の明け渡しを求めることができます。契約違反とは、例えば「家賃の滞納」や「無断転移」「建物の用法違反」などが当てはまります。
ただ、入居者にも生活があるので、契約違反が発覚したからといってすぐに退去を求めることができるわけではありません。例えば、例にあげた「家賃の滞納」では、一ヶ月分の家賃未払いが発生した程度では契約の解除はできず、貸主と借主の信頼関係が破壊されたと認められる場合のおいて正当な理由として契約解除が可能です。
一般的なケースが考えるのであれば、3ヶ月以上の家賃滞納があると契約解除の事由があると判断されて立ち退き料が不要になるケースが多くなっています。
②定期借家契約している
定期借家契約では契約の更新がなく、定められた期間の満了によって賃貸借契約が終了します。つまり、定められた期間さえ満了してしまえば、どのような理由でも賃借人に明け渡しを求めるができ、立ち退き料は不要ということです。
この定期借家契約は契約期間を自由に設定できますが、契約期間が1年以上の場合には期間満了の1年前から1ヶ月までの間に期間満了で契約が終わることを貸主側から知らせなくてはいけません。そのため、予め物件の建て替えなどが決まっている場合や転勤中に賃貸に出して戻ってくる予定がある場合には、定期借家契約を結ぶことで立ち退き交渉をせずに明け渡しを要求できるようにしておくことがオススメです。
③取壊し予定物件の賃貸借契約
取り壊し予定建物の賃貸借契約では、一定期間後に建物を取り壊す予定があり、取り壊し時に賃貸借を終了する前提で締結する契約になります。この場合には事前に取り壊すと決まっている期間まで借主が住むことを認めているため、期間満期で退去を要求することができ、立ち退き料を支払う必要がありません。
④一時的な使用目的での賃貸借契約
一時的な使用を目的として賃貸借をした場合には、借地借家法の規定が適用されず、立ち退きを求める際にも理由に関係なく立ち退き料を支払う必要がありません。
例えば、契約の際に誰が見ても一時的な使用が目的であると客観的にみてわかるケースや、その事実を借主が認識して一時使用に同意した場合です。また、賃貸借期間が短いことも一時的な理由と考えられますが、こういった場合には自宅の建て替えなどの間、仮住まいとして契約するケースでしょう。
立ち退き料の相場はいくら?
立ち退き料に金額の明確な基準というのはありませんが、立ち退き料の相場は概ね家賃6ヶ月分となっています。もちろん、これは相場なので入居者との交渉次第で安くできるケースもあります。
特に入居者側に債務不履行がある場合や建物の老朽化が著しいといったケースでは、立ち退き料を安く抑えたり、支払わずに済むというケースも多くなっています。そのため、立ち退き交渉に関しては長引けば長引くほどオーナー側のデメリットは大きく、入居者の中には長く住むことで立ち退き料を吊り上げようとする人も少なからずいるので注意しておきましょう。
また、住居を含めてテナントの場合には業種によっても異なり、金額的な相場は以下のようになっています。
用途 | 立ち退き料の相場 | |
---|---|---|
住宅(アパート・戸建て) | 40万円~80万円程度 | |
店舗 | コンビニ・ドラッグストア | 7,000万円~1.5億円 |
診療所・歯医者 | 1億円~2億円 | |
小規模物販店舗 | 300万円~600万円 | |
飲食店(1階) | 1,000万円~1.5億円 | |
飲食店(1階以外) | 500万円~1,000万円 | |
美容院 | 400万円~500万円 |
入居者との信頼関係がとても重要になってくる立ち退き料ですが、場合によってはさらに高額になる場合も考慮しなくてはいけず、訴訟となれば裁判所が立ち退き料の支払を条件に明け渡しを命じることもあるため、早い段階で入居者と信頼関係を構築しておくようにするのが最も良いでしょう。
また、立ち退き料はアパートやマンション経営以外にもテナントなどがあります。住居と比較すると高額になる分、テナントでの相場は数百万〜数千万円と金額の幅が大きくなっています。テナントでの相場が高額になる傾向として、転移先での改装工事費用や営業停止といった損失を補填する必要が発生するためです。
業種や店舗の規模によって異なることから、相場における金額幅も大きく変わってくるので覚えておきましょう。
支払う立ち退き料の内容
立ち退き料といっても、支払う貸主側からすれば少しでも安くしたいのが本音です。そのため、実際に支払うべき内容を相場通りで考えるのではなく、その内訳を知ったうえで支払うべき項目と不要になる項目とで別け、もしも不要な立ち退き料の内訳があれば交渉で安くできるように試みてみましょう。
立ち退き料において考慮すべき要素は以下の5つになります。
- 引越し費用
- 転移先を確保するための費用
- 通信費用
- 慰謝料&迷惑料
- 営業補填
これらを含めて詳しく説明していくので、入居者に関係のない費用を請求されないためにもなぜ必要なのかという点も理解していきましょう。
引越し費用
引越し費用は本来借主に発生するはずではなかった出費になるため、貸主が負担するのが一般的です。ただ、荷物の量や運搬距離によって金額は変わるうえ、引っ越し時期によっても大きな負担になる場合もあるので注意しておきましょう。
特に2月〜4月といった引っ越しシーズンでは、どこの業者も多忙期のため相場の引っ越し費用よりも高額になるケースが多く、退去をお願いする際の経費を少しでも減らしたいのであれば考えておく必要があります。
移転先を確保するための費用
引っ越す場合には本来発生するはずではなかった費用を貸主が負担すると先述でお伝えしましたが、これは引越し先の新しい部屋を契約するために必要な費用も同じです。
不動産業者に支払う仲介手数料や敷金礼金、火災保険などが該当します。
また、転移先での家賃が現在よりも高くなるケースの転移では、その差額の2年分を支払うことが一般的になっています。これは、賃貸借契約が2年がという期間で区切られていることが多いためです。
通信費用
通信費用はその部屋で設備されていたインターネット環境や電話回線を整えるために費用となります。今ではインターネット回線の普及率が高くなっていることもあり、負担するケースが多くなっているので覚えておきましょう。
慰謝料や迷惑料
引っ越しにかかる費用以外に実際に出費が発生するわけではありませんが、慰謝料や迷惑料を支払う必要があります。これは貸主が立ち退きを請求する事情や貸主側の事情が考慮され、引っ越し自体が心理的負担としてかかるうえ、通勤時間も変わったり、家族の場合には子供の転校といった部分が考慮して考えられます。
こういった事情を考慮し、立ち退き料の相場である家賃6ヶ月分に数ヶ月分を上乗せし、立ち退き料を支払うということで立ち退き交渉はスムーズにいくケースが多く、分かりやすく立ち退き料を安く抑えようとするのは逆効果になるため、事前に入居者の状況なども把握したうえで交渉を進めましょう。
営業補償(テナントの場合)
テナントではその店舗の業種や転移先次第で損失が発生することになります。転移するということは営業を休止する必要があることから、本来得られるはずだった利益や従業員への休業手当などを支払う必要があり、住居に比べるとかなり高額な立ち退き料を支払うケースが多くなっています。
そして、転移先が変わることで常連客なども失う可能性があり、こういった部分も補償対象となる可能性もあるうえ、テナントを構えていた立地などでも売上が左右されることから立ち退き料の相場も大きく幅があるというわけです。
立ち退き料を安くするための対策
不動産を所有するオーナーの本音としては、支払うことは理解していても出来るだけ安く済ませたいはずです。ただ、入居者側もできるだけで多くもらいたいという考えがあるため、交渉は難航しがちです。
安くするのはもちろんですが、スムーズな交渉と立ち退きは長引くよりも圧倒的にコスト削減に繋がるため、ポイントとしては先述でもあった立ち退き料以外の部分の着目し、入居者の立ち退き時期や敷金の返還といった立ち退き料以外の項目で、無理なく譲渡できるポイントを材料に入居者と交渉していくことがオススメです。
そのための対策として、今から紹介する10のポイントを抑えておくように心がけましょう。
①入居者が少なくなったタイミングで交渉に入る
立ち退きは、入居者が少なくなったタイミングで着手するのが基本です。これは、立ち退き料の総額を減らすために入居者の少ない段階で交渉する鉄則でもあります。
多くの入居者と立ち退き交渉を行うと時間だけではなく、トラブルや立ち退き料も増えることになるため、建て替えを検討し始めたら新規入居者募集を停めておき、自然と退去していくのを待つようにしましょう。
マンションやアパート比べればテナントは立ち退き料が高額になるため、店舗が退去したタイミングは立ち退き交渉のチャンスでもあり、アパートやマンションであれば空室が7割以上となったら交渉の手間も立ち退き料も抑えることができるためオススメです。
②定期借家契約への切り替えを検討する
先述でもお伝えしたように、定期借家契約では理由に関わらず期間満期で契約が終わります。つまり、新規の入居者とは定期借家契約を結び、既に住んでいる入居者は定期借家契約に切り替えるといった対応をすることができれば、立ち退き料は支払わずに済みます。
普通の賃貸借契約では退去の要求が難しいということもあり、立ち退きまでに時間の時間の余裕がある場合にはこの方法は最も最適な手段になるため、早い段階で対策できるように考えておくのがいいでしょう。ただ、テナントなどは別として、アパートやマンションなどの住居は平成13年3月1日以前に締結した普通賃貸借契約は当事者の合意があったとしても定期借家契約に変更できないので気をつけておきましょう。
③引越し先の物件提供
提供している物件の代わりとなる「代替物件」を提供することも立ち退き料を安くする方法としては有効です。これは、貸主が保有している別の賃貸物件へ転移先として転移することで立ち退き料を安くするということです。
ただ、これは他の物件を保有していなかったり、入居者の現在の環境(職場や家族の都合)もあるため全てのオーナーが行える方法ではありません。しかし、もしも可能であれば立ち退き料を大幅に削減することができます。
④用途違反などの解除事由を確認する
立ち退き料を安くするための方法として、用途違反を入居者が犯していないかを確認することも重要です。もしも借主に契約違反がある場合には契約解除事由となりますので、立ち退き料を支払わずに契約を解除することができます。
例えば、住宅以外不可の物件などを店舗として利用していないか、ペット不可の物件でペットを飼っていないかといった物件における禁止事項です。その他にも長期間の家賃滞納がある場合には記録を残しておくのも重要となるため、
賃借人に契約違反(債務不履行)がある場合には契約解除事由となり、立ち退き料を支払わずに契約を解除できます。
入居者が住宅以外不可の物件を店舗などとして利用していないか、ペット不可の物件でペットを飼っていないかなどを確認しましょう。また、長期間の家賃滞納がある場合には記録を残しておくことも重要です。
しかし、用途違反による契約解除は裁判までもつれ込むと認められないケースもあり、貸主との間で信頼関係が破壊されている状態か認められるかがポイントになるので、事前に弁護士に確認したうえで打診するようにしてください。
⑤原状回復の義務を免除する
借主には退去時に原状回復義務が課せられていることもあり、これを免除することも立ち退き料を安くするためのコツとしては有効です。建て替えを予定しているのであれば原状回復をして貰う必要もありませんので、原状回復を免除することで貸主の負担を軽くし、交渉カードの1つとして使うのは効果的です。
特にテナントなどでは原状回復に多額の費用が発生することもあり、大きな切り札になるでしょう。
⑥敷金を先に返還する
入居者から頂いていた敷金を先に返還することも立ち退き料を安くする可能性があります。敷金は本来家賃未払いや原状回復費用の充填に当てるために預かっているものになりますが、立ち退きをするのであれば敷金を預ける必要性も低下します。
特にテナントのように店舗では多額の敷金を預かっていることもあり、敷金を先に返還することで資金操りが大幅に改善することで好意的に受け取られることが多くなっています。
⑦退去までの家賃を減額・免除する
入居者が退去までに支払う家賃を減額したり、フリーレント期間として扱うことでも立ち退き料を安く抑えることができる可能性があります。定期借家ではなく、無償の使用貸借に切り替えることで借主の権利が弱くなるため、貸主はいつでも借主を退去させることが可能となるわけです。
使用貸借にに切り替えるためには、一旦今の普通借家契約を合意解除することで新しく使用貸借契約を締結することで可能となります。
⑧再入居を約束する
物件の建て替えや改修工事による立ち退きの場合、建て替え後の入居を約束することで立ち退き料を安くする事が可能です。特にテナントのような場合には再入居の確約は効果的で、新しい建物のプランや現在の意見も取り入れながら設計すれば相手もかなり納得してくれたうえで立ち退きに応じてくれるはずです。
⑨裁判は出来る限り避ける
立ち退きは裁判にまで発展すると貸主の立場がかなり弱くなってしまいます。司法の判断はあくまでも借地借家法の法律に基づいて行われることもあり、借主の権利を強力に守る法律が適応され、裁判は借主を手厚く守るとする発想で裁判が流れていきます。
こうなれば借主が主張する金額に寄ってしまう可能性が高く、立ち退き料は高くなるケースが非常に多いため、裁判ではなく任意の話し合いで解決することが最も重要となります。
⑩入居者と良好な関係を築く
やはり最終的には、入居者とどれだけ良い関係を築くかが大切です。立ち退き交渉を有利に進めるにあたっての前提として、仲が悪ければ不要なトラブルを招く可能性が高くなります。
しかし、良好な関係を築いておけば交渉次第で有利な譲歩を期待できるかもしれません。入居者とのコミュニケーションは難しいですが、入居審査の際にはしっかりと仲介業者から人柄を聞き、問題のない人なのか?トラブルを近隣と起こしていないか?なども把握しておくようにしましょう。
立ち退き対策は出来るだけ早く準備しておく
今回の記事では、不動産において入居者に立ち退きを要求する際の立ち退き料の相場や大凡の金額を解説しました。急な立ち退きほど入居者にかかる迷惑はなく、立ち退き料も高額になるため、事前に立ち退き料を安くするための対策や計画を練っておくようにしましょう。
特にやり方次第で立ち退き料を支払わずに済むこともありますが、余計なトラブルや裁判にまで発展すれば時間とともに余計な経費がどんどん増えていくことになります。そのため、出来る限り早く準備し、円滑に交渉していけるよう誠意もって一定の譲歩を示すことを忘れずに考えておきましょう。
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