国の発展を見るために、教育と医療を見ることで分かるといわれています。日本の医療技術や設備は世界的にもトップであり、これは他の国にない国民健康保険など見れば分かるように、医療への充実さは多くの人が知ることでしょう。
ただ、その医療のレベルが高すぎることで世界でも長寿国として知られており、少子高齢化に拍車をかけている部分もあります。そんな高齢者の数が増え、若者の人数が減っている日本ですが、子供の出生数は年々減少していることもご存知でしょう。
しかし、そんな子どもたちが受ける日本の教育は世界的にみてどうでしょうか。
日本の教育費の公的支出割合は、OECD加盟国(国際経済全般について協議することを目的とした国際機関)の中で最低レベルであるといわれています。
欧州諸国、米国、日本などを含む34カ国の先進諸国によって構成されているOECD加盟国は、34か国の他、欧州委員会(EC)もOECD諸活動に参加しています。そんな中で最低レベルというのは、医療に反比例して子供への投資が足りていないとして話題になることも多くあります。
ただ、公的支出割合は低いとして、親として私的支出はどうなっているかご存知でしょうか。富裕層を初めてとして世界中で子供への教育費へお金をつぎ込む人は多くいますが、意外と子供の教育に関して無頓着な人も日本では多くいます。
今回の記事では、世界的にみて日本の教育費の感覚はどうなっているのかを紹介したいと思います。親であれば子供の成績や将来を気にするはずですが、子供に言い聞かせるだけではなく、「環境」や「学力向上」といった親だからできることも将来へ大きく影響します。
医療と反比例している日本の教育ですが、日本では子供の教育に対してどれだけ投資しているのかを見ていきたいと思います。
一流大学へ子供を入学させるため資産売却
日本の人たちと海外では、教育に対してかなり意識の差があります。例えば、シンガポールでは一般庶民で夫婦え働いていても家庭教師をつけたり、教育費に惜しみなく投資することが多くあります。なかには欧米の大学に行かせるために、保有している土地や自宅、株式や車を売却して行かせる家庭もあるほどです。
実際に成長した子供が仕事で成功し、売却した資産を買い戻すという話も伝わってくるほど「教育=投資」という考えが強くあります。
日本でも教育に関して様々な指摘がされていますが、親の収入と子供の学歴の因果関係は明確に分かっており、富の格差が学力の差に繋がる可能性が指摘されています。
国家予算を4割近くを教育に投資する国
日本の国家予算は75%が「社会保障(年金・医療・介護)」「地方交付税交付金(地方自治体への収入格差を減らすための交付金)」「国債費(借金の返済)」に当てられています。
特に社会保障は少子高齢化の日本では削ることが難しく、高齢者に使われている国家予算という見方をする人もいます。それに対し、シンガポールでは教育費の重要性を理解しており、国家予算の約40%近くを「教育」と「国防」に使っています。
日本ではこの「国防」と「教育」それぞれ5%程度しか投資していませんので、各家庭で教育費を捻出するしかない状況でもあります。
日本で子供のかかる教育費は、文部科学省をもとに過去に紹介した幼稚園から公立高校までの学習費でも1人あたり公立514万円、全て私立であれば1830万円となっています。つまり、教育費が重い状況にも関わらず公的支出の割合が少ないため、家計負担に多くを頼っているという現状です。
また、下記は、OECD加盟国による教育機関に対する教育支出の私費負担割合です。
引用元:教育機関に対する教育支出の私費負担割合(OECD『図表でみる教育(Education at a Glance)OECDインディケータ 2017年版(カントリー・ノート:日本)』
青色は小学校・中学校・高等学校以外の教育費用ですので、特別高いというわけではありません。しかし、グレーのグラフで表示された高等教育に関しては非常に高く、数ある中でも2位という高水準で多くの教育費を私的支出に頼っていることが分かります。
日本における教育費用の補助は不十分
日本では、就学前教育に対するGDP比の公支出は最低水準になっており、各家庭による負担の割合が大きいの事実です。私費をプラスしたとしても、OECD諸国と比較してみると未就学児にかけるお金が少なくなっている傾向になっていますが、日本でも2020年の4月から「私立高校授業料実質無償化」が強化されました。
恐らく私立に通う学生の親御さんからすれば嬉しいニュースのはずです。
「私立高校授業料実質無償化」は、全日制の私立高校に通う場合に支援金が年間で39万6000円(限度額)が支給され、通信制でも年間で29万7000円受け取ることができます。
教育費が支給されるのは嬉しいですが、正直な話ではまだ足りていないはずです。政府は消費税増税による財政の一部を用いて、子供や子育て支援にお金をかけようとしています。ただ、この「私立高校授業料実質無償化」についても、年収が590万円以上910万円未満の世帯は対象外であり、子供が2人以上いる世帯ではまだまだ足りていないというのが本音です。
日本では少子化が進んでおり、経済的にも将来厳しい状況になるのが分かりますが、それでも少子化で子供が減れば、投資する教育費も減るため政府が税金を投入する額も必然的に少なくなります。
これでは減っているからこそ支援できる状態になっているだけで、本当に必要な額を支援しているかというと疑問が残るはずです。また、日本では年収によって支援金がなくなったり、減ってしまうことも多くあり、不景気で年収が年々下がりつつあるサラリーマンにとってみれば、非常に子供への教育費を捻出しずらくなっている状況でもあります。
新型コロナウイルス以降、さらに不景気になることが予測される日本ですが、やはり子供の教育費の大部分を私費負担が占める割合が大きいのは、日本では自己責任のもとあまり話題になることが少ない問題でもあるはずです。
経済力がない家庭の子供は教育が不十分の可能性
教育に対する補助など、国からの支援も増えている昨今ですが、当然支援がある分の税収はどこかから徴収したり、その分の得られたはずの支援を減らさなくてはいけません。
現状少しずつ増えている子供に対して教育予算ですが、まだ充分とは言えないはずです。親に経済力がない子供が十分な教育を受けづらくなっていると言う状況は、今後大幅に改善されるという予想をする人も少なく、期待する人は多くありません。
そんな中で、祖父母らが孫の教育費を一括贈与した場合「贈与額の非課税措置」を設けたことが分かっています。国が教育費などの政策的な支援を大きな予算を割いてできないなか、お金を持っている祖父母から孫への教育投資へ促そうという流れが見て取れます。
そうなると富裕層は孫への教育投資をさらに大きくするでしょうが、当然そういった教育投資は祖父母からも受けられない家庭も多いですので、さらに日本では教育格差が広がるのではという不安も多くなっています。
早い段階から子供の教育費用を考える必要性
シンガポールや韓国、中華系の人たちは、特にライフプランを早期から考えている人が多くいますが、将来子供にかかる教育費用の総額や老後資金なども考えていることが当たり前であり、一般の人でも明確に言うことができます。
中には、人生自体にお金がかかるから「子供は1人にしている」と考えている人もおり、自身の経済力を踏まえたうえで、十分に教育を受けさせられる人数に子供を制限している人さえいます。
特別富裕層ではない海外では、子供をあえて1人にして教育投資を集中するという話は、意外と珍しくありあません。その良し悪しは人によって異なるでしょうが、ライフプランや家族計画をしっかりと考えることは日本人も必要なことなはずです。
ここで質問ですが、あなたは将来必要になる教育資金や老後資金、あるいは不足している費用はいくらかすぐに頭に思い浮かぶでしょうか?
高学歴の人ほど親の年収が高いことが分かっていますが、将来子供を良い大学や就職先にと考えているのであれば、計画的に教育費用を準備していく心構えを持った方が良いでしょう。
少子高齢化や東京オリンピックの影響で将来子供たちが支払う税金の額も多くなると予測できますが、将来の子供たちへの教育だけではなく、生活する私達の生活も踏まえて自身の子供へできることはなにか?将来を見越して対策するためにどうするのかを考え、行動できる人が生き残る世の中になるかもしれません。
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