資産運用で人気な投資信託は、運用を専門家に全て任せられる金融商品ですが、投資信託と同じく株や債券への投資も非常に人気です。ただ、株や債券の違いや、そもそも投資信託との大きな違いはなにか?という点において、あまり詳しく知らない人も多くいます。
株式投資はリスクはあれどリターンも大きいと聞けば心揺さぶられますし、債券は元本が保障されていてリスクを抑えられるとなれば、どちらに運用するべきか悩んで中々始めることが出来ないというのは初心者によくあるケースです。
ただ、投資信託のように組み入れる銘柄の判断や管理といった投資判断を専門家に任せられるの対し、株式・債券では投資する銘柄やタイミングまで自分自身で判断しなければいけません。
投資信託は手数料が非常に高いので、多少の手間ぐらいなら株か債券に投資しようと考えている人は、ぜひ投資対象としてこの2つの値動きの違いを知っておきましょう。
「株」と「債券」にも強みと弱みがあり、どちらかではなく2つに分散投資することで大きく弱点をカバーしながら運用を成功させやすくなります。今回の記事では、「株」と債券」の2つの投資先に対しての抑えておきたいポイントを解説していきます。
株と債券の違いとは?
資産運用で分散投資を行うことは、資産を減らすリスクを抑えることができるので非常に重要です。しかし、何も考えずに色々な金融商品を購入するのでは意味がありません。
株と債券に関しても同じで、この2つの投資の違いを理解しながら最低限どういうものなのかを知った上で投資を行いましょう。似ているように感じますが、株と債券は全く違う資産であり、異なる値動きをする投資対象です。
既に運用している人や、勉強している人もいるかもしれませんが、とても重要な部分になるので「株と債券」の何がどう違うのかを今一度確認しておきましょう。
株についての基本
株式投資は、企業に対して出資する投資方法です。投資した企業の業績が上がれば当然株価も上昇するため、購入時との違いからキャピタルゲイン(売却益)を得ることが可能です。
また、株式を保有している間は株主として配当金を受け取る権利もありますので、インカムゲインと呼ばれる保有中に得られる利益も株式投資では非常に大きい儲け方です。債券と大きく異なる点は、どれぐらいの利益になるのかが不確定であり損失になる可能性もあることです。
債券と違って元本保証されているわけではないので、この点は注意しておくべきポイントになります。ただ、配当金以外にも株主優待も貰える銘柄もあり、投資企業の業績が良ければ大きな利益を出すこともできます。
債券についての基本
債券は貸したお金に対する借用証書になります。例えば、日本国債を購入するということは日本政府にお金を貸しているということになります。国債は借り手である政府が発行する借用証書になり、貸しているので基本的に期限がくることで返してもらえます。
そして、貸している期間は利子が発生するので、「株に投資するのは怖いけど、銀行に預けているよりも利子は多いから」と国債を購入する人は意外と少なくありません。ただ、債券の場合には株式投資と違って元本保証されていることもあり、利子は非常に小さくなっています。
購入した時点で受け取り利子が確定している金融商品(個人向け国債のうち「変動10」は変動金利の債券なため例外)になるので、初心者向きではありますが資産運用で債券だけに投資するのはあまり利益が期待できないことを理解しておきましょう。
金利に密接な関係がある株と債券
株と債券への投資において、密接な関係にあるのが「金利」です。
一般的に長期金利が下落すると株価は上昇し、逆に金利が上昇すると株価は下落します。長期金利とは取引期間が1年を超える債券などの金利のことを言いますが、金利によって債券で発生する利子か変わりますので、なぜ金利の変動が「株」と「債券」に影響を及ぼすのかを知っておきましょう。
株式と金利の関係
株式投資の場合には、当たり前ですが投資した企業の業績や日本全体の景気が関係します。
一見株価と金利の関係は薄いように感じますが、例えば長期金利が5%から1%まで下がった場合、投資家は定期預金にお金を預けておくよりも、株式に投資したほうが良い判断するため長期金利が下がった場合には株価は上昇する傾向が多くなっています。
つまり、金利が下落したときには株式の買い時ともいえるわけです。ただ、多くの人が知っているように日本は超低金利ですので、金利の変動が株式への投資タイミングを決めることにはなりえません。
一方で、長期金利が上昇した場合にはどうなるのか?
例えば長期金利が1%から5%に上がった場合、投資家の多くが株式へ投資するほうがリスクが高いと考え、定期預金へお金を移す方が儲けられると投資家は考えるため、長期金利が上昇した際には株価は下がると言われています。また、企業からしても借り入れコストが金利が上昇することで増えるため、設備投資の縮小なども考慮にいれると株価は下がりやすくなるというわけです。
債券と金利の関係
参照元:アセットマネジメントOne
債券の価格は基本的に市場金利の変動によって日々変わっています。例えば、金利が1%から5%の上昇した場合には投資していた時の債券の金利よりも、金利の高い方に投資した方が魅力的だと判断され、債券の価格は下がります。
逆に金利が5%から1%に下落した場合には、1%よりも高く買った場合の債権の方が儲かると考えられ、債券の需要が大きくなるため債券価格は上昇します。
- 金利が変動する債券
- 金利が固定の債券
もしもこの2つがあった場合には、当然ですが景気が悪くて金利が低いときには金利が固定の方が人気が高いでしょう。しかし、景気が良くなり金利が上がれば、固定金利の債券の人気は下がることになります。
そうなれば価格を下げないと購入する人が減るので、債券の価格は下がるというわけです。実際にはこのように単純ではありませんが、金利と債券の関係については簡単に理解できたはずです。
株・債券・金利の関係で注意したポイント
ここで「株」「債券」「金利」の3つの関係から注意しておきたいポイントをお伝えしたいと思います。
株価が上昇しているときには、景気の良い状態になるので高い金利でも借り入れをする企業も多くなり、金利が上昇します。しかし、不景気で株価が下がっている経済状況では、国債などの債券需要が増えるため、債券価格が上昇して債券の金利は低下します。
景気が良いときに金利が上昇するのは、「景気が良くなりすぎないために金利を引き上げる」という判断がされるため、株よりも金利の上がった債券の魅力が高くなります。つまり、金利によって影響を受けることの多い株と債券は、基本的に反比例した値動きをすることが多いということです。
ただ、景気がよくなって金利が上昇しても、株価は金利上昇をものともせずに上がることもありますので、注意しておきましょう。
「債券」で発生する金利上昇と信用のリスク
債券では定期的に利息が発生する商品ですが、償還期限前に譲渡しようとすると時価で売ることなりますので、元本を下回ることもあり得ます。この点は事前に注意しておきたいポイントです。
債券に関しては償還期限前に売らないことが前提で、元本割れの心配がない金融商品になりますが、金利が上昇することでさらに大きい金利の債券が発売されれば心を揺さぶられる人も多いでしょう。
特に利回りの高い方に買い直すとなると、元本償還の期限の前に債券を換金する必要も発生するため、債券価格を下げるいう選択をしてしまう人もいるはずです。しかし、そうなると金利上昇によって債券の価格が下がるため、債券の金利上昇リスクが発生することを忘れてはいけません。
「気付いたときには既に大きく債券価格が下がっていた」なんていうのはよくある話ですので、安易に売却せずにおきましょう。金利上昇のリスクと共に重要なリスクに、債券リスクがあります、債券のリスクも把握したうえで分散させることが重要になるので、次は債券の信用リスクについて解説していきます。
利益が確定している債券で発生するリスク
株式投資は、利益は大きいですが損失も大きいのでハイリスク・ハイリターンな投資です。しかし一方で、債券に関してはローリスク・ローリターンなため、投資で大きい儲けを期待している人から見ると、物足りなさを感じてしまうかもしれません。
ただ、ローリスク・ローリターンな債券にもリスクはあります。
債券とは、いわばお金を貸す行為ですので期限がくることで元本が返済されます。ここまで多くの人がご存知でしょう。ただ、それは借り手が返済するお金がある場合です。
万が一にも借り手が返済前に倒産したり、破綻したりすれば投資した資金は返ってこないことになります。
それが再検討しのデフォルト(債券不履行)と呼ばれる事態になります。過去にはロシア国債やギリシア国債などの実例がありますが、企業でも日本の日本航空などが焦げ付いてしまった債券発行体があります。
このようなリスクは信用リスクという言い方をします。国債の場合には心配はないでしょうが、それでも日本には約1200兆円の借金があり、新型コロナウイルスの影響でさらに膨れ上がっている状態でもあります。
債券の信用リスクは信用格付によって確認することができ、スタンダード&プアーズやムーディーズのような第三者の中立的評価機関が定量的に評価して発表しています。
信用格付けの「最高位AAA」「AA」「A」「BBB」と表示され、「BB」以下を投資不適格といったが表現されます。格付けが下がるほど信用リスクが高くなるので、高利率の債権には注意しておきましょう。
信用リスクを把握して銘柄を見極めるようにすることが求められますが、これは株式投資の個々の銘柄にも倒産するリスクはあるので同じでしょう。ただ、いくら債券投資といえども必ず安全ではないことは理解しておくべきことです。
株式と債券の両方へ分散投資すると損失をカバーできる
ここまで金利によって発生する株式と債券への影響、そして関係をお伝えしました。
どちらに投資したほうが良いのか?というのは、投資する資金量や運用期間、性格や投資経験の有無で判断が異なるでしょう。
ただ、株式と債券が反比例の値動きをするということから、どちらに投資するのではなく、両方に分散して投資するのがオススメです。もちろん、その分資金を大きくするのではなく、元々投資する額を半分ずつ株式と債券へ投資するということです。
金利によって2つとも影響は受けますが、影響の受け方も金融商品の特徴も異なります。そのため、あえてどちらかに絞るのではなく、両方へ資金を分散投資させることで損失が発生しても片方で利益が発生するので損失を補うことができます。
また、利益が発生すれば、利益分を現金化することで割合を等しくし、今後の値動きで損失が発生しても損をするリスクを抑えることができます。このような分散投資の割合や損益のバランスはポートフォリオから見直していくことで考えるようにしましょう。
全く正反対の金融資産だからこそ、期待収益率に合わせては配分比率を決めることが重要です。
「投資信託」と「債券」は相性が最悪
債券の最大のメリットは満期になれが投資した資金が全額戻ってくるうえ、その間定期的に利子を受け取れる点です。
ここで気を付けたいのが投資信託で債券ファンドを選ぶ場合です。投資信託は初心者でも専門家に運用を丸投げできるので初心者でも安心ですが、債券の最大の魅力が投信になった途端になくなってしまうという事を知っておかなくてはいけません。
投資信託では満期はなく、ある場合でも満期時での元本保証は当然ありません。しかし、債券で購入することで得られる安心材料が、投信で購入することでなくなってしまうわけです。個人でも日本国債は購入できますので、わざわざ投信の形で債券を買う必要があるか?というとかなり疑問なはずです。
日本国債の場合には半年の1回の利払いですので、毎月現金が欲しいという人は毎月分配型投信やETFの形で購入する意味はありますが、それでは債券のこだわる必要もないでしょう。
普通の債券に比べれば投信は簡単には途中売却できるので、短期投資では有効な投資手段かもしれませんが、複数銘柄への分散投資や長期保有の場合には投信やETFへ投資することでメリットがなくなってしまうので注意しましょう。
「債券の最大の魅力を放棄してまで投信やETFに投資してしまっていた」なんて後から気づくことがないように事前に理解しておくようにしてください。
まとめ
株と債券の違いや関係性についてお伝えしましたが、この2つの価格は複雑な要素が絡み合って変動しています。ただ、金利や景気によって大きく変動するからこそ、不透明であり片方だけに投資するのはリスクが高くなる場合があります。
そのため、株へ投資を考えている人は債券も含めて分散投資でリスクを抑えられるようにしましょう。
債券では満期まで利子が貰えますが、1年や3年とそれなりに長い期間投資しておかなくては債券価格によっては損をする可能性もあり、満期まで保有していれば元本保証というメリットがなくなってしまいます。
銀行よりも利息が高いといっても大きく変わることはないので、もう少し利益を期待できる運用も交えたい場合には株式投資も交えて資金配合を考えるのが大切です。
基本的には反比例する値動きがするからこそ、利益と損失のバランスを考えて運用できるようにしていきましょう。
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